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言語文化教育研究センター概要



言語文化教育研究センターの設立にあたって

多様性とは
私たちの社会は、今、「多様性の時代」を迎えたと言われています。外国にルーツをもつ人が増え、異なる言語を母語とする人とともに生きることが、これまで以上に身近になったと感じる人も多いでしょう。しかし、「多様である」とは、そのようなことによって初めてもたらされるものなのでしょうか。
同じ日本語を話しているように見えても、一人一人が使うことばはまったく同じではありません。地域によって、世代によって、そして、じつは一人一人の経験によっても、使うことばは少しずつ異なり、そこにはそれぞれ異なる文化が育まれてきました。一方で、近代化が進むなかで、ことばに境界が引かれ、標準化され、時にはそこに優劣があると捉えられるようにもなりました。ことばに対する評価が、それを使う人への評価と結びつくこともありました。こうしたことばの捉え方は、外国語学習にも見られます。中学・高校で履修できる外国語は英語に偏り、そこではネイティブの発音や言い回しが重視される傾向にあります。

何のためにことばを学ぶのか
そして今、生成 AI の登場により、外国語を学ぶ必要がなくなるのではないかとも言われています。しかし、本当にそうでしょうか。その問いに向き合うには、「何のためにことばを学ぶのか」を考えてみる必要があります。この問いは、「どのような社会を生きたいか」を考えることともつながります。
本センターの大きな役割の一つに、「日本語教員養成プログラム」の運営があります。私たちは、「日本語教育」を、単に一つの言語を教えるための教育とは捉えません。日本語教育を学ぶことは、日本語を教えるための専門性を身につけることに加え、ことばを通して人や社会について考えることでもあります。そして、日本語教育の場で出会う一人一人のことばに向き合うことは、自分自身がこれまで当然だと思ってきたことを問い直すことにもつながります。それは、日本語教員をめざす人だけに必要な学びではなく、これからの社会を生きる私たち一人一人に関わる学びだと考えます。本センターの名称を「言語文化教育研究センター」としたのも、こうした考えに基づいています。そこには、日本語教育に限定せず、言語と文化を一体的に捉えることで、一人一人がもつことばの多様性を大切にしたいという思いを込めています。

日本語教育から、ことばと社会を考える
「日本語教育の参照枠」(文化庁、2019)にも示されているように、現在の日本語教育では、学習者を社会的存在として捉え、言語を使って「できること」に注目し、多様な日本語を尊重することが重視されています。私たちが実際に使っていることばに目を向けると、日本語や英語といった枠だけでは捉えきれない、一人一人のことばが見えてきます。私たちは、そうした一人一人のことばと、その背景にある文化を尊重する教育・研究を大切にします。こうした考えのもと、本学で長年取り組んできた日本語教員養成を、より多くの学生に開いていきます。2027 年度からは、全学部・学科の学生を対象とした「日本語教員養成プログラム」をスタートします。日本語教育を専門的に学びたい学生だけでなく、それぞれに異なる専門を学ぶ学生が、ともに学び、考え、実践します。

ともに学び、ともに考える
日本語教育の場で出会う人々は、言語、文化、年齢、経験、生活様式、学習目的など、さまざまな点において異なります。そうした一人一人に向き合うためには、一つの専門や価値観だけから考えるのではなく、自分とは異なる見方に出会うことが必要です。異なる専門を学ぶ学生が対話し、互いの知識や経験を持ち寄りながら協働する。本センターでは、その経験そのものを大切にしたいと考えています。
また、学びの場を本学の中だけに閉じることなく、他大学、各種学校、企業、地域など、さまざまな機関との協働を進めます。異なる立場や専門をもつ人々と出会い、対話し、ともに実践する中で、ことばの教育がめざすものについて考えていきます。

私たちは、何のためにことばを学ぶのでしょうか。
ことばを学ぶことは、私たちがともに生きる社会とどのようにかかわっているのでしょうか。


言語文化教育研究センターは、教育と研究、そしてさまざまな人々との協働を通して、ことばの教育のあり方を問い直しながら、探究を続けていきます。

2026(令和8)年 10 月1日
言語文化教育研究センター長 近藤 有美