自己点検・評価

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まとめ

 昨今、わが国の国際化が急速に進展するにつれ、一般の大学においても語学教育に力を入れ始めた。そのため、外国語を専門とする外国語大学のraison d'etreが問われようとしている。こういう時代にあって、今後とも本学が発展するためには、教育・研究のソフト、ハード両面にわたりしっかりした将来目標を定め、不断の改革・改善を進めなければならない。このたび、はじめて改革・改善実施計画に基盤を置いて全学的な体制で自己点検・評価を行い、その結果、さまざまな特色や改善すべき点が明らかとなった。それらの主なものを列挙すれば次のとおりである。
1.特色
(1)Power-up Tutorialの実施
 本学では魅力ある授業を提供しようと不断の検討を重ねている。その一つがPower-up Tutorialである。平成15年度から外国語学部英米語学科と国際経営学部の1年次生を対象として実施することとした。このプログラムは、2年次生以後、英語によりテーマをきめて読み、書き、発表するための予備教育として重要な役割を果たすことを期待している。両学部とも学生によるアンケートの結果、他の科目に比べて最も高い評価を得た。平成16年度からフランス語学科、中国語学科及び日本語学科でも実施する予定である。
(2)母語としての日本語の再教育
 外国語運用能力の向上と日本語の読解力や表現力の鍛錬とを車の両輪と捉え外国語学部1年次生に必修科目として基礎ゼミを、国際経営学部1年次生には研究基礎トレーニングを課し、日本語の正しい使い方や論文の書き方を指導している。
(3)TOEFL(ITP)テストの実施
 平成15年度から外国語学部英米語学科と国際経営学部の学生全員に対して学年の始めと終わりにTOEFL(ITP)テストを実施することとした。専攻語学の学習進度を客観的に把握するのに有効な方法の一つであり、また、学生の英語の学力を底上げするための指標としても役立つ。
(4)フレッシュマンキャンプの実施
 新入生は高校から大学に入学した途端異文化ショックに悩み、戸惑い、自信喪失、挫折を体験するケースも少なくない。こうした悲惨な結果をできるだけ予防し健全な大学生活に適応させるために入学直後にフレッシュマンキャンプを行うことは極めて有効である。平成15年度に英米語学科ではじめて実施され、学生から非常な好評を博した。この成果を得て、平成16年度から他の学科でも順次実施することを検討している。
(5)充実した留学制度
 本学では一人でも多くの学生を海外に留学させるため外国の28大学と学生交流協定(国際交流協定を結んだ大学は42校)を締結し交換留学を中心に留学制度の整備を図ってきた。その結果、年々留学する学生が増え、平成15年度には長期留学として交換留学49名、認定留学57名を派遣した。これに私費留学113名を加えると、総勢219名が海外で異文化体験をしたことになる。更に、各学部・学科で企画した短期の語学海外研修には総勢330名が参加した。このようにみると長期、短期あわせて549名が海外に留学したことになり、本学の学生は4年間の在学期間中に3分の2の者が海外を経験することが出来ることになる。今後は、原則として何らかの形で全員の学生が留学できるよう一層制度の充実を図りたい。以上のとおり本学では留学制度の実施運用に全力をあげており、受入れ大学での評価も高い。
(6)キャンパスの国際化
 本学の日本語教育センターで学ぶ別科生は、大半が本学の学生との交換留学生で欧米圏の学生が圧倒的に多い。定期的に開催される国際交流パーティー、留学生の授業参加、インターナショナル・ハウスでの日本人学生との共同生活、留学生の各種サークル活動への参加、日本人学生と留学生が昼休みに昼食を共にしながらそれぞれの外国語で自由に会話を楽しむランゲージ・ラウンジ等々キャンパス自体が国際化されている。
(7)客員教員制度等の導入
 本学では専任教員を設置基準に定められた数以上の人数を採用している。その上に提携校との協議により毎年度最長4年の任期(ただし契約は1年毎)で客員教員を招聘している。更に、日本語教育センターの別科生のうち優秀な学生を大学卒業後、Power-up-Tutorialのチューターとして採用している。平成15年度は客員教員11名、チューター6名を受け入れた。これにより教員層の厚みが増し、充実した教育が展開できるのも本学の強みである。

 以上のとおり数々の特色がある反面、以下のように改善を図るべき事項も残されている。
2.改善すべき事項
(1)教育研究組織の改革
 設立当初、国際経営学部が定めた目標と現実とに乖離が見られ、年々受験生が減少した。この事態に直面し1年有余に亘り、自己点検・評価を行い、その結果に基づき、同学部を「現代国際学部」に抜本的に改組し、平成16年度から発足させることとなった。この新学部が目論見どおり、成功するように全学あげて努力する必要がある。
また、本学の情報インフラを整備するため、学内措置によりメディア情報教育センターを立ち上げた。まだ専任職員は事務職員3名のみであり、今後予想される膨大な業務量を処理するためには全く不十分である。とりあえず専任教員1名を配置するなど体制を整えたい。
(2)厳格な成績評価を行う仕組みの導入
 現在、教員は各自の担当科目の成績評価については厳密に行っているものと思われるが、その成績評価の基準自体が教員の裁量に委ねられているため、評価基準全体で見るとある程度の「ゆれ」が存在することは否定できない。
成績評価の厳密さと同時に公平性をともに高めるためには、教員ごとの成績評価の実態、科目ごとに見られる成績評価の傾向、学生ごとの成績実績などについて客観的な議論が行えるように、たとえばGPAを導入する可能性も含めて、本学の実情に合うような新しい仕組みについて検討する必要がある。                    
(3)学生による授業評価の実施
 これまで、学科単位或いは教員個人によるアンケート調査は積極的に行われているが、一部を除いてほとんど結果の公表はされず、学科或いは学部内の共通認識になっていない。今後は全学的な統一基準に基づき学生による授業評価を実施し、教授・学習の質の見直しと改善に役立てたい。
(4)FD活動の活性化
 平成13年2月にFD委員会を設置し、「学生の受講態度」及び「授業の活性化」についてアンケート調査を実施し、その結果を全学の教員にフイードバックし各教員の授業改善に役立てるよう促したが、それ以後はほとんど活動していない。このたびの自己点検・評価の結果を踏まえて、FD委員会を再開し、その指導のもとで、教授法検討・研究会或いは教員研修会等を開催し、教員の専門能力の向上を図りたい。
(5)研究活動の活性化
 教育活動を実践的な研究活動と位置づけ教育活動の中で研究テーマを見つけて理論的に解明する方向で研究活動の活性化を図る。そのために研究条件の整備・充実を図るとともに、研究成果に対する客観的な評価システムの確立を図りたい。
(6)学生生活に対するサービスの向上
 まず、リーダーズ・キャンプ等により、学生諸集団のリーダーに、人間としての最も基本的な能力である自己管理能力と自主性を身につけさせ、その輪を全学生に広げるとともに、学生を優れた社会人として世に送り出すための支援体制であるキャリア・サポートセンターを、新年度から発足させ、一年次生から真剣に人生計画に取り組ませる。
なお、近い将来、保健管理センター(仮称)を設け、心身の健全性の横溢を図ることも検討している。
(7)図書館の情報化の推進
 学術情報ネットワークへの連携を強化し、電子図書館的・学術情報発信的機能の整備充実を図る。
(8)さらなる留学制度の充実
 留学制度については、原則として何らかの形で全員の学生が留学できるよう一層制度の拡充を目指す。さらに学生交流協定のある外国の大学との間で、共同学位留学制度(ダブルデグリー制度)の導入を検討中である。相互に学位を出せるようにするためには本学自身が国際的にも評価されるような質の高い大学に発展させなければならない。そのためにも今回の自己点検・評価の結果を大学基準協会の評価を含めて学生や社会に公表するとともに、次回以降の自己点検・評価に備えて体制を整備することがぜひとも必要である。

 上記の他、施設・設備、財政、管理運営、事務組織等の項で示したさまざまな改善策にも積極的に取り組みたい。

名古屋外国語大学改革・改善実施計画(平成16年4月〜平成20年3月)
目     標 目標を達成するための措置
I教育研究の質の向上に関する目標
1. 教育に関する目標
外国語を熟知して幅広い知識と教養を身につけ国際社会で活躍する人材を育成する。
(1)教育の成果の関する目標
専攻語を駆使して国際的に活躍できる人材を育成する。
1. 専攻語学の到達度に一定の基準を設け、学生全員をその基準まで引き上げる。
2. 教養教育と専門教育の一貫性の向上を図る。
3. 専門科目の一層の充実を図る。
4. 高度専門職業人養成の充実を図る。
5. 教育の成果・効果を検証するための自己点検・評価を行うとともに第三者評価を積極的に導入する。
(2)教育内容等に関する目標
魅力ある独自の教育プログラムを提供して優れた人材の育成を図る。
1. 魅力ある教育プログラムを提供しそれに沿った実効ある教育を実施する。
2. シラバスの内容の充実を図る。
3. 教育プログラムの水準を保証する適正な成績評価を実施する。
4. 学部、大学院での英語による教育プログラムの開講数と受講者数を増やす。
5. 海外の大学との単位互換プログラムの充実を図る。
6. 社会の広範な分野で活躍できるよう正課外教育も充実させる。
(3)教育の実施体制等に関する目標
(優れた教育者の確保)
a 教育業績を重視した人材採用を推進するとともに大学全体の教育実施体制の強化を図る。
1. 優れた教育業績を持つ教員の採用を増やす。
2. 客員教員制度を活用し教育実施体制の充実を図る。
3. 教員専門能力を向上させる教員研修を奨励する。
(教育の質の評価と改善)
b教育の内容及び方法に関する評価を実施し、その質と水準の向上を図る。
1. 教授法と技術の向上に必要なFD活動を推進する。
2. 在学生及び卒業生に教育満足度調査を定期的に実施し、教授・学習の質の見直しと改善に役立てる。
3. 学生の理解度等が容易に把握できるようにするために学生の成績データ情報を充実させる。
(教育支援機能の充実)
c 教育支援の施設・設備を充実して教育学習支援機能の向上を図る。
1. 学習支援センターを創設し、語学・情報システムの導入を図る。
2. 教育学習に必要な資料・情報の収集・提供に努めるとともに電子図書館的機能及びネットワークを高度化し、情報アクセス環境の整備を図り教育学習支援機能を充実する。
(e-learning環境整備)
d 情報技術を活用したe-learning
の教授・学習の環境整備を促進する。
1. 在学生の自主学習を促進するe-learningの教授・学習システムを創設する。
2.研究に関する目標
教育活動そのものを実践的な研究活動と位置付け教育活動の中で研究テーマを見つけて理論的に解明する方向で研究活動を活性化させる。
(1)研究内容に関する目標
教育活動の改善・充実に役立つ研究を指向する。
1. 教育活動に密着した基礎的な研究の進展を図る。
2. 人文・社会の各分野で基礎的・萌芽的研究の進展を図る。
(2)研究成果に関する目標
(研究成果に対する評価システムの導入)
a 研究の質の向上を図るために研究成果に対する評価システムの改善を図る。
1. 研究成果に対する客観的な評価を行うことが出来る評価体制を確立する。
(研究成果の公表)
b 優れた研究成果をあげそれを社会に還元する。
1. 優れた研究成果を学術専門誌、国際会議、国内学会等に公表して積極的に社会に発信する。
(学術研究体制の整備)
c高度な学術研究の成果をあげるための組織と環境を整備する。
1. 優れた学術研究を支える各種の研究条件や研究環境の整備・充実を図る。
2. 研究体制を支援する組織の整備・充実を図る。
(外部研究資金の確保)
d 国、地方公共団体、民間団体等から多様な研究資金を確保する。
1. 科学研究費補助金その他の競争的研究資金への応募件数を増加させる。
2. 外部資金確保のための情報提供・サービス事務的支援体制を整備する
3.学生の受け入れに関する目標
優れた資質を持つ学生を集めるために、学生の受け入れ方針を明示してそれに合致した適切な入学者選抜方法を工夫する。
1. アドミッション・ポリシーを確立する。
2. 入学後の教育との関連を十分踏まえた入学者選抜方法を策定する。
3. 効果的な広報活動により大学の理念、教育の方針並びに特色、学生募集方針。入試関連情報の周知を図る。
4. 教育及び大学運営上適性規模の入学者を確保する。
5. 入学者選抜並びに学生募集に係る広報について工夫・改善に努めるため、関係組織の一層の充実を図る。
4.学生への支援に関する目標
学生の学習に対するサービスを充実し、その支援環境を整備するとともに、学生生活に対する援助、助言、指導の体制の充実を図る。
1. 多様な学生のニーズを尊重した学習・進学・就職支援のサービスを充実する。
2. 学生に対する心身両面のケアを行う体制を強化する。
3. 優れた課外活動の実践を支援する環境整備を行う。
4. セクシャルハラスメントに対する予防対策を充実させる。
5.社会との連帯に関する目標
学内施設の公開を促進し知的活動による成果の有効活用を図るとともに地域文化の向上に貢献する。
1. 付属図書館を公開し地域サービスを充実する。
2. 地域文化の振興を図るため公開講座、講演会を積極的に行う。
3. 中学校、高等学校英語教師を対象とした公開講座を開設し、英語教師の資質向上に役立たせるとともに高大連携を深める。
4. 地方自治体及び地域住民と連携して地域の国際化に貢献する。
6.国際交流に関する目標
教育と研究の国際交流を促進し世界との交流に貢献する。
1. 留学生の受け入れ、派遣制度を拡充強化し学生交流の積極的な推進を図る。
2. 研究者の受け入れ、派遣を活発に行い国際共同研究を推進する。
3. 外国の大学との連携教育プログラムを開発し、単位互換制度、共同学位制度を確立する。
7.学術情報基盤に関する目標
教育と研究を支援するための学術情報基盤の整備充実を図る。
1. 全学的な学術情報の拠点となる付属図書館の充実を図る。
2. 学内情報インフラの整備を図る。
8.教育研究組織の見直しに関する目標
時代の変化に対応して必要に応じて教育研究組織の見直・再編を行う。
1. 既設の教育研究組織を常時見直し、必要に応じて再編を行う。
2. 国際経営学部を改組して現代国国際学部を創設する。
3. IT化を推進する教育・研究のための専門部署を創設する。
II 管理運営等に関する目標
1.財務内容の改善に関する目標
学校法人が大学運営を自律的かつ円滑に運営するため財務内容の一層の改善を図る。
1. 学生納付金は極力値上げを避け国庫補助金、寄付金など外部資金の増額を図る。
2. 教育・研究に必要な資金を充当するとともに、エネルギー等の経費の効率化、省力化を進め管理的経費の抑制を図る。
2.管理運営の改善に関する目標
自主・自律を基本に大学運営全般を見直し柔軟な大学運営体制を整備する。
1. 学長を補佐して大学全体の戦略的企画・執行・評価を行う組織運営体制を整備する。
2. 大学の活動全般に対するユーザー・ニーズ満足指標を定期的に収集し今後の活動に適切に反映させる。
3.事務組織に関する目標
大学の教育研究を支援する事務組織の整備充実を図る。
1. 教員と職員の区別にとらわれない柔軟な管理運営体制を整備する。
2. 事務職員の専門性の向上と改善のための支援と援助の制度を整備する。
3. 男女共同参画の推進を図り女性教職員の登用を積極的に進める。
4. 高度の専門性を修得させるために大学院プログラムの研修機会を与える。
5. 各種の研修を通じて職員に経営的センスの涵養を図る。
6. 事務職員に対する人事考課の徹底と適正な評価の実施を図る。
4.施設設備の整備の目標
教育研究を推進する上で必要な施設・設備を整備するとともに、快適な環境を整えるためにキャンパスのインフラストラクチャーの整備充実を図る。
1. 教育研究を円滑に実施するため必要な施設・設備を整備する。
2. 教育研究に必要な水・ガス・電気等の安全かつ安定的     な供給を図る。
3. 緑化の推進と植栽の維持管理を図る。
4. 防犯・警備体制及びセキュリティーの強化を図る。
5. 災害・防災対策・危機管理体制を整備する。
6. 施設のバリアフリー化の整備計画を立てそれに基づき実行する。