自己点検・評価

自己点検・評価インデックス>>第3章第2節(1)教育課程

教育研究の内容・方法と条件整備

第2節 国際経営学部

(1)教育課程

 近年のグローバル化の進展に伴い、英語を中心とする高度なコミュニケーション能力を持ち、国際社会とりわけ国際的なビジネス環境において活躍できる人材がますます必要とされている。こうした社会的要請にこたえるために、国際経営学科一学科からなる国際経営学部が1994年(平成6年)、名古屋外国語大学における2つ目の学部として設置された。学部の理念・設置目的に従って、発足当初から英語科目と国際社会の理解を目指す科目そしてビジネス関係科目を教育課程の柱とするカリキュラムが組まれていたが、1999年の大学全体のカリキュラム改革に伴い、本学部のカリキュラムも一部変更が加えられ現在に至った。

 本学部の現在のカリキュラムには3つの軸がある。
一つは学部の理念・目的を達成するための科目群の有機的な編成である。
本学部の科目系列は、共通科目・ゼミナール科目・専門科目の3つの群からなっており、学生はそれぞれのグループから必要な単位を取得することにより、本学を卒業した後社会人として求められる素養を身につけることができる。それぞれのグループの内容については後述する。

 2つ目は、コース制である。これは「国際経営」「国際会計」「国際関係」の3コースからなっており、学生はそれぞれの関心に応じて必ずいずれかのコースに所属し、専門的に学習することとなっている。コース選択は、3年次、どのコースの専門ゼミナールに所属するかを決めることによって行われる。個人指導を重点的に行う専門ゼミナールへの所属とコース選択が組み合わされているのである。

 3つ目は、セメスター制(2学期制)をとっている点である。これは本大学全体のカリキュラム編成の基本ともなっているものであるが、取り分け本学部では、専門科目群の講義科目で週2回の授業を受けることによって、各科目の内容をいわば集中的に学ぶことが可能になっている。

 このように3つの軸を有する教育課程を本学部の教育はなされてきた。以下においては、まず科目編成について述べることにしたい。

 本学部の科目編成は上述のように、共通科目・ゼミナール科目・専門科目から構成され、共通科目は一般教養的な内容を中心としている。ゼミナール科目は1年次の基礎ゼミナールから始まり3・4年次の専門ゼミナールに至るまで大学教育を受けるための基礎的な訓練を行う場でもあり、かつ教員との個人指導やゼミナール所属学生同士の討論などを通した他者理解力・コミュニケーション能力の養成にも役立っている。その上で3・4年次の専門ゼミナールにおいて専門的な学習を行う場としても設定されている。共通科目やゼミナール科目によって、「幅広い深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する」という要件が満たされている。他方、専門科目群は、国際コミュニケーションを展開する上で必須の能力である英語コミュニケーション能力を養成する英語科目及び国際社会とりわけビジネス社会で活躍するために必要な国際社会への理解とビジネス展開に必要な会計・経営の専門的な知識を身につける科目からなっていることによって、「専攻に係る専門の学芸を教授」する科目群としての性格を有している。こうした3つの科目群からなる教育課程の編成によって、学校教育法第52条、大学設置基準第19条に定める要件は満たされている。以下、個々の科目群の特徴・編成について述べる。
1)共通科目
 学生が国際的に活躍できる社会人として必要な基礎的な教養内容を身につけるために本学が設けた科目群であり、文字通り、設置科目・必要単位数などすべて外国語学部と共通している。詳細についてはすでに外国語学部の教育課程の項目で述べられているので、本項では省略するが、本学部においても主に1・2年生がまず履修するものであり、教育課程において基礎教育と倫理性を培う教育という位置づけを与えられている。

 また、 現代社会における必須のスキルとしてパソコンを中心とした情報処理スキルが上げられる。本学でももちろん、こうした社会的必要に対応すべく、1年次必修科目として情報処理が共通科目の枠内で設置されてきた。こうした設定の前提は、中高では全ての生徒がパソコンスキルの修得を行うまでには未だ至っておらず、むしろ、大学において初めて情報処理の授業を受ける機会を持つ学生が圧倒的に多いという状況であった。しかし、高校のカリキュラムにおける「情報」科目の設置に伴い、こうした前提そのものが変わってきており、入学時の時点で多くの学生がパソコンに親しんでいると考えられる、しかしそのスキルのレベルに関しては依然として個人的な格差は大きいであろう、しかも大学卒業時にはやはり必ずある程度の情報処理スキルを身につけておく必要が必ずある、という認識のもと、情報処理については、新設の現代国際学部ではカリキュラムを大幅に変更し、共通科目からはずし、学部の「情報 skill program」として複数の科目を設置しそのうち3科目6単位を卒業時までに履修しなければならない選択必修科目として位置づけることとなった。

2)ゼミナール科目
 本学部のカリキュラムの特徴のひとつである。1年次には基礎ゼミナール、2年次には英書講読ゼミナール、3・4年次には専門ゼミナールが設定されている。いずれも必修科目となっており、従って学生は、1年次から4年次まで4年間一貫してゼミナール科目(合計14単位)履修しなければならない。ゼミナール形式の少人数クラス編成のもとで、学生は教員から個人指導を含む密度の高い指導を、それによって、最終的には国際経営学部学生として必要な専門知識と問題処理能力を身につけることが可能となっているのである。1年次の基礎ゼミナールでは、大学教育を受けるための基礎的な素養とスキルを身につけるための訓練がなされる。

 具体的には、テーマ設定、資料調査、レポート作成、研究報告、討論がいかに行われるべきかが少人数クラスで教えられることとなっている。2年次の英書講読ゼミナールでは、基礎ゼミナールの成果に基づき、英語文献を用いて研究を行うために、どのように英文を読むべきか、それをどう活用すべきかなどが教えられる。更に「専攻に係る専門の学芸」を学生が修得するためのゼミナール科目として、3・4年次必修科目として「専門ゼミナール」を設置している。これは学生が、自ら選択した専攻に係る分野の深い理解と必要な技能の修得を、2年間を通して同一教員の指導のもとに目指すものである。学生は2年次末に、自らの関心に従ってこの指導教員を選択し、3・4年次その指導を受け、学業の集大成を図ることになる。国際経営学部生としての研究の集大成の場として専門ゼミナールは位置づけられているのである。

 また、近年しばしば問題になる大学生の「基礎学力の低下」は、本学でも如実に感じられている。国際経営学部の一年生対象の「基礎ゼミナール」はこうした傾向に対し、学生が大学生として専門教育を受けることができるよう、その準備教育として位置づけられている。しかも、専任教員が少人数クラスを担当することによって、個人指導の要素も加味しており、単なる知識の伝達ではなく、日本語の正しい使い方とともにテーマの設定、そのための情報の収集、レポート作成、プレゼンテーション、討論など、大学生として持つべき基本的なスキルと、他者とのコミュニケーションの方法を取得する科目として設定されているのであり、すでに述べたように、その後のゼミナール科目との接続もそこでは意図されている。当初この基礎ゼミナールは1年次を通しての必修科目(基礎ゼミナールIと基礎ゼミナールIIで計4単位が必修)であったが、1999年のカリキュラム改正によって、専任教員が責任を持って指導するという体制を維持しようとするためという理由で、1セメスターで履修すべき2単位必修科目になった。しかし、近年になればなるほど、学生の基礎学力の低下は深刻になり、1セメスターの指導で十分かという疑問が残る。従って、新設の現代国際学部では、大学教育への導入授業としての性格をより明確にするため、名称も「研究基礎トレーニング」とし、1年間の指導を行うものとした。
3)専門科目
 これは国際社会の状況についての理解とビジネスの実践に必要な専門的知識の習得をめざすもので、卒業必要単位としては76単位が設定されている。この専門科目は更に、国際社会の場で実際に用いることができるコミュニケーション能力の育成に重点を置いた専攻語学としての英語科目(Communicative Englishその他)、世界の各地域の状況を知り、国際的な感覚を育成することをめざした地域研究科目、国際社会を深く理解し、ビジネスの場における有用な知識と問題意識を身につけるための経営・会計・国際関係に関わる科目群、そして全学開放科目および他大学開講科目からなっている。
それぞれのグループでの卒業単位数は、学生が学習を進め、本学部の理念・目的にかなった人材となるために必要な学習内容と量をカバーするものとして設定されている。
1. 専攻語学(英語科目)
 本学部では国際社会で活動するための必須の言語として英語を専攻語学とし、4年間継続して学習できるようカリキュラムが組まれている。1・2年次ではCommunicative English(以下CEと略す)(24単位)が必修であり、3年次以降は選択科目として Advanced Communicative English(以下ACEと略す)及びBusiness English(以下BEと略す)の科目群を配し、前者のCEは統合的なカリキュラムとして設計されている。1・2年次とも、Active English(1単位)、 Integrated English(総合英語)(2単位)、Current Topics(時事英語)(1単位)、Joho Eigo Mac(情報英語Mac)(1単位)、Joho Eigo Win(情報英語Win)(1単位)の6つの部門からなっており、これらがまとまってそれぞれCEIからIVを構成している。従って学生は各学期においてそれぞれのCEを履修するためには、この6つの部門を全て履修しなければならない。 Active Englishは2003年度(平成15年度)からは、1年次に3人1組のPower-up Tutorialとしてネイティブの教員による指導が行われていることで、少人数クラスによる英語コミュニケーション能力の育成という趣旨が徹底されている。ここでは本学部で独自に開発した SOCCs ( Students' Own Conversation Cards)を用い、学生が主体的に授業参加することで英語の会話能力の向上が目指されている。

 また、Integrated English(総合英語)はペア学習・小グループ学習によって総合的な英語力の育成が目指されている。更に、Current Topics(時事英語)では、時事問題を扱い、単に語彙能力の向上を目指すだけでなく、同時に現代の国際的状況への理解を深めるものである。

 Joho Eigo Mac(情報英語Mac)とJoho Eigo Win(情報英語Win)は、国際社会で必須とされる情報機器の取り扱い、インターネットの活用を英語で、しかも2つのタイプのOSを用いて学ぶことで、英語能力の向上のみならず国際的な情報社会への適応能力をも学生が身につけることをめざしている。CEはI〜IVまであるが、学生が緊張感を持ち学習を進めるべく、段階制をとっており、前段階を履修しなければ後の段階へは進めないという形態をとっている。

 また、入学時には入学試験の成績により、2年次への進級時においても、1年次の成績に基づいて習熟度に応じたクラス編成を行っている。

 CEで修得した英語コミュニケーション能力を更に向上させるために、3・4年次にはACEとBEが設置されており、学生はどの科目を選択してもよい。ACEはさまざまな英語分野を対象とする14の科目からなっている。英語能力の各分野(Speaking、 Listening、Reading、Writing)の更なる向上を目指すクラス、通訳技能についてのクラス、或いはプレゼンテーション能力の向上を目指すクラス、英米のポップカルチャーについてのクラス、合衆国の歴史についてのクラスなど、多彩なクラス編成が行われており、学生は自らの関心に従って選択し、英語コミュニケーション能力を向上させ英米文化の理解を深めることができるようになっている。BEはビジネス社会で実践的に使用できる英語の能力向上を目指すための科目である。
2. 地域研究科目
 地域研究科目は、「アメリカ事情」「ヨーロッパ事情」「アジア事情」それぞれI、IIからなっている。Iは「社会・文化」をIIは「政治・経済」を扱い、計6科目が設定されている。学生はこの6科目中最低2科目4単位を選択し、世界の各地域の実情を学ぶことによって国際的な理解を深める?ことができるようになっている。

 この科目群の科目は1年次から履修できることとなっている。学生が各コースに所属し専門的な学習を始める以前に、幅広い国際的な理解を有することが必要であると考えたからである。
3. 専門科目
 専門科目の中には、各コースの専門的内容に応じた科目群が置かれている。国際社会理解・ビジネス関連の科目群とでもいうべきもので、これらはカリキュラム上では、学部選択必修科目(12単位)、コース選択必修科目(12単位)及び選択科目の3群からなっている。

 このうち、学部選択必修科目は「経営学総論」「国際経営論」「簿記原理」「経済原論」の4科目中3科目を学生は卒業時までに履修しなければならないというもので、ビジネス社会で活躍できるために必ず修得しておかねばならない科目群として位置づけられている。従って、学部入学と同時に学生には「経営学総論」を除く3科目については履修の機会が与えられ、1年次から専門の基本的内容を学習できることとなっている。

 さらにコース選択に従って各コース(国際経営・国際会計・国際関係)の特性に応じた科目が各コース5科目計15科目置かれている。そして学生は自らのコースから最低2科目8単位を含めた、合計3科目12単位を履修しなければならない。この科目群は学生が所属コースを決定し、自らの学習の方向性を定めた3年次以降に履修すべきものとなっている。

 また、選択科目群は、経営・会計・国際関係に関する講義科目と海外研修科目及び「検定試験」科目からなっている。

 講義科目は学生の多様な関心に応ずることができるよう設定されており、一部は2年次から、大多数はやはり学生の学習の方向性が定まった3年次以降に開講されている。また2003年度(平成15年度)から学生の関心の広がりに対応すべく「カルチュラル・スタディーズ」「国際ジェンダー論」「国際ジャーナリズム」「NGOと国際ボランティア」「国際観光論」などの科目が設置された。海外研修はI・IIの2科目あり、それぞれ2週間、4週間の海外での研修を行うものである。現在では主にIIの4週間の海外研修が各年度複数回実施されている。

 本学部の海外研修は単に語学研修に留まらず、研修現地でのインターンシップをも取り入れ、実践的な英語能力の向上に役立っている。「検定試験」は外国語学部のそれと同様、さまざまな検定試験に学生が合格ないしは所定の点数を取得した場合、それに対応する単位を付与するという者であり、本学部では、英語関連試験(英検・TOEFL・TOEIC)、簿記・会計関連試験(日本商工会議所簿記検定試験・税理士試験・公認会計士試験等)、情報処理関連試験(基本情報技術者試験等)が対象となっている。 

 その他、これら専門科目以外に、本学では、学部・学科の枠を超えて専門的な科目を履修することを希望する学生のために、1999年度のカリキュラム改正により、「全学開放科目」を設定した。これは、各学部の専門科目の中から、いくつかを他学部・他学科の学生のために開放するものある。従来、国際経営学部では外国語学部とは異なり副専攻語学を設定していなかったため、学生は英語以外の語学を履修する機会を持てなかったが、この制度により、外国語学部で副専攻語学として開設されている英語以外の言語を習得することができるようになった。この全学開放科目に加え、2002年度(平成14年度)より「他大学開講科目」が設定された。これは愛知県学長懇話会の取り決めによる大学間単位互換制度に基づくものであり、学生は名古屋外国語大学以外の大学の「他大学開講科目」として開設されている科目で関心を持つものがあれば履修し単位取得できることになっている。この全学開放科目、他大学開講科目あわせて卒業単位中12単位まで取得が可能となっている。こうした制度はできるだけ学生の自主的な選択を尊重し、学生の多様な関心に応じた履修が可能となるべきだという、本学のカリキュラムの基本的な考え方に基づくものである。

 こうしたカリキュラム編成によって、本学部では学校教育法第52条と大学設置基準第19条の趣旨は実現されていると考えている。教養性を高め倫理的な感覚を養うための科目群として共通科目があり、また専門科目の地域研究科目も幅広い国際的な理解を得る科目としての役割を果たしている。その他の英語科目を含む専門科目群は「深く専門の学芸を教授研究」するための科目群として設定されている。特筆すべきは本学部におけるゼミナールの位置づけである。4年間の一貫したゼミナール科目の履修を通じて、学生は、一方では専門的な知識を学び自ら研究するための姿勢を身につけることができ、他方では、教員やゼミナール所属他学生との密接な交流を通じて幅広い知識と深い倫理性を身につける機会を得ている。取り分け専門ゼミナールは国際経営学部では重要な位置を占めている。専門ゼミナールでは学生は2年間所属ゼミが変わらず、同一教員の指導を一貫して受けることになっている。自らの専門性を深める場であると同時に、自らの研究が教員や他学生によって絶えず批判的検討の対象となるということによって、現代の学生にややもすれば欠けがちな、他者との真摯なコミュニケーションの機会を得ている。言い換えれば「総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する場」ともなり得ているのである。

 こうした科目編成は、また1・2年次に共通科目や基礎ゼミナールなど基礎教育・倫理性を培う教育が重点的におかれ、更に専門科目の編成においても学年が進行するに従って基礎的な科目からより専門的な科目へという配置がなされていることからも十分体系性を有しているということができる。また特に基礎教育・教養教育については本学では教員組織としての「総合教養」が置かれており、責任をもってその教育に当ることになっており、さらに基礎ゼミナールについては本学部専任教員が担当することになっていることで、基礎教育と教養教育の実施・運営のための責任体制も十分に確立し、その体制のもとで実践されているということができる。

 このような特徴をもった現行のカリキュラムはすでに述べたように1999年度の全学カリキュラム改正に伴って編成されたものであり、このカリキュラムの枠組みの中でではあるが、各年度に問題点の洗い直しを教務委員会を中心に行い、小規模な改正を繰り返し行ってきた。

 まず2000年度には、専門科目の履修開始学年の見直しを行った。これによって専門科目の地域研究科目および専門選択必修科目の一部の履修が1年次よりできることとなった。これには二つの理由がある。一つは専門的な内容に早くから親しむ機会を学生に与えることでその後の学修の方向性を定めることを容易にすべきであると判断したことである。もう一つは、共通科目の各学期の履修科目数が3科目までと上限が定められているため、1年次に履修できる単位数が限られ2年次以降の履修の負担が大きくなりすぎる恐れがあったためである。2002年度には上述のように「他大学開講科目」が設置され、更に2003年度には専門科目のCEの1年次科目に Power-up Tutorialが開講され、より少人数(3名の学生に対し1名のネイティブ教員)クラスでの英語学習が可能となった。また同年度に専門科目選択科目に新しい科目が付け加えられたことも上述した通りである。国際経営学部としてこうした改正を積み重ねてきたが、なお問題点は残っている。カリキュラム上の問題点をここで洗い出しておくことにする。