自己点検・評価

自己点検・評価インデックス>> 第3章第1節 (1)外国語学部

教育研究の内容・方法と条件整備

 目標:専攻する各分野において総合的な教育プログラムを提供し、基礎的及び実践的な教育研究を通じて、幅広い知識と国際感覚を身につけ、国内外で活躍できる人材を育成する。

目標を達成するための措置
  1. 専攻語学の到達度に一定の基準を設け、学生全員をその基準まで引き上げる。
  2. 科目の授業内容に沿った少人数教育を実施し、専門科目の一層の充実を図る。
  3. 魅力ある教育プログラムを提供しそれに沿った実効ある教育を実施する。
  4. 社会の広範な分野で活躍できるよう正課外教育も充実させる。
  5. 英語による教育プログラムの開講数と受講者数を増す。
  6. 海外の大学との単位互換プログラムの充実を図る。
  7. 教育プログラムの水準を保証する適正な成績評価の実施を図る。
  8. 教授法と技術の向上を図るためFD活動を積極的に推進する。
  9. 学生による授業評価を実施する。

第1節 外国語学部

(1)教育課程

 本学部は、国際社会で活躍できる人材の養成という建学の理念に基づき、世界を舞台に活躍するための高度な語学力と鋭い国際感覚を養うことを教育目的としている。この目的を実現するため、英米語学科・フランス語学科・中国語学科の各学科は1988年の開学以来努力を重ねてきたが、1999年には日本語学科が増設され、新たな全学開放科目が教育課程に加えられた。

 また同年、外国語学部と国際経営学部のカリキュラムの一部が統合され、多くの科目の授業内容が刷新された。このような経過の中で、総合的な語学力を礎とした幅広い文化的視野の獲得を旨とする教育課程が、継続的に整備されてきた。

1)学部共通
1. 科目群・科目系列と学部の理念・目的との関連等
 本学部の教育課程は各学科とも、共通科目、ゼミナール科目、専門科目の3科目群から成り立っている。
共通科目においては、「人文科学・社会科学・自然科学」といった従来の固定的な枠組みを廃し、「人間・文化・社会・経済・総合」といったテーマの下に幅広い分野にわたる多様な講義科目を展開することによって、学生が自らの関心に応じ、より自由に主体的に履修科目を選択し、幅広く深い教養を身につけることができるよう配慮している。

 また、その内容についても、1年生を対象とした共通科目Iでは多様で幅広い学問領域に触れることができるよう、2年生を対象とした共通科目IIではより深い思考力・総合的判断力を養うことができるよう、3・4年生を対象とした共通科目IIIでは社会人としての豊かな人間性を培うことができるよう、それぞれ考慮されている。共通科目の科目群は、この他に「情報処理」「体育」の2系列を加えた計5系列から構成されているが、そのいずれの系列も学部4学科(ひいては両学部)に共通の科目であるという性格から、各学科から独立した教員組織である「総合教養」の責任体制のもとで実施運営されている。また、各学科の学生は、これら共通科目群と平行して、一年次よりそれぞれの専門科目を履修する。このことは言語そのものについて深く理解し、柔軟で幅広い思考力をもった知識人の育成をめざす本学部にとって、その目標に合致した重要な特色となっている。

 ゼミナール科目には、1年生を対象とした「基礎ゼミ」と、3・4年生を対象とした「専門ゼミ」とが設けられている。基礎ゼミは、本学部の1年生全員が履修する必修科目であり、基礎的な日本語運用能力を訓練するための演習科目であるが、本学部においては、その理念・教育目標を支える重要な基礎科目となっている。

 本学部では、一般的に大学生の国語力低下が深刻に懸念される今日、英語・フランス語・中国語などの外国語の運用能力の向上と、日本語の読解力や表現力の鍛錬とを車の両輪と捉え、論理的思考力の養成に心血を注いでいる。「基礎ゼミ」での日本語の訓練と、「専門ゼミ」での専攻語学の修練がこの目的を具体化している。専攻語学を学ぶことを通じて、日本語を客観的な視点から見直し、世界に向けて思考や情報を発信することのできる、自立した日本人の育成を共通の目的とする本学部にとって、これら両ゼミナール科目は教育課程の重要な核となるものである。
専門科目の科目群は、専攻語学・副専攻語学・専攻文化・専攻語学研究の各系列及び選択科目としての海外研修・検定試験・卒業論文から構成されている。4年間を通しての段階履修となっている専攻語学においては、読解能力とコミュニケーション能力をうまく組み合わせてバランス良く言語運用力を高める、という本学部の目標を効率良く達成するため、一部の授業において少人数教育を実施すると同時に、学科によっては習熟度別クラス制の導入や、学生3人の超少人数クラスの授業を実施している。1・2年次の必修科目である専攻文化の科目系列は、専攻する言語圏の文化に対する基礎的知識を修得するため、地理・歴史・社会・文学・言語などの広範な領域から、概論的ではあるが総合的に学べるように工夫されている。これらの講義科目の中には、高校時に社会科の履修方法に差異があるため基本的事項の理解に著しい差がみられることから、有効な参考図書や映像資料を提示するなどの対応策が具体化されつつある。 また、専攻文化は3・4年次の専攻語研究や専門ゼミにおいて高度な内容を学ぶための準備と位置づけられているが、他学科・他学部の2年次以上の学生も履修できるよう全学開放科目に指定されている。

 このシステムは、国際関係が複雑化する中で国際貢献・国際協力を推進する原動力となる「地球市民」を育成するという本学部の目的に沿ったものである。同じくこの目的に合致しているのは専門科目群に組み込まれている副専攻語学である。本学部では専攻語学以外の外国語を履修することを義務づけており、後述するように、専攻語学と同様の力を注いでいる。とりわけ日本語学科では、深いレベルでの日本語理解を支えるものとして英語教育を特に強調している。

 以上、3科目群から編成された本学部の教育課程と本学部の理念・目的との関係について述べたが、その内容は教育基本法第52条及び大学設置基準第19条の趣旨とも合致する。本学部の教育課程においては、共通科目や専門科目の専攻文化で「広く知識を授け」ると同時に「幅広く深い教養及び総合的な判断力」を培い、専門科目の専攻語研究やゼミナール科目の専門ゼミで「深く専門の学芸を教授研究し」ている。また、共通科目やゼミナール科目及び専門科目において、「知的・道徳的及び応用的能力を展開させ」ている。なかでも道徳性については、共通科目において思想・倫理・教育(人権)などを開講して倫理観の育成に努めており、各学科の専門科目として単位化されている「海外研修」は、授業を通して得た知的能力を実際に応用し、同時に語学力の増進や異文化の理解の深化を図る場として位置づけられている。

 本学部の教育課程においてはまた、上述した3科目群の各系列のもとに、本学部の目的達成のために必要な授業科目を開設している。後に詳述するように、これらの科目群は各学科において体系的に編成されており、本学部はその理念を具現化した卒業生を国際社会に送り出すための学士課程としてのカリキュラムを備えているといえる。更に各学科のカリキュラム編成において、「専攻に係る専門の学芸を教授」する科目と、「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する」ための科目とをバランスよく配置し、ゼミナール科目や専門科目での少人数教育を通して「豊かな人間性を涵養する」ための配慮に万全を期している。これらの各科目群・科目系列の卒業所要総単位数に占める量的配分については、以下に説明する。
2.科目群・科目系列と卒業所要総単位数に占める量的配分
 本学部では1999年度(平成11年度)のカリキュラム改正により、卒業に必要な単位数が130単位から124単位へと変更された。この改正で共通科目群の系列が、既述したように新たな枠組のもとに再編成され、よりグローバル化時代に適した「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培う」科目群へと生まれ変わった。また、卒業に必要な単位数に占める「任意の選択科目」の単位数が12単位から16単位へと増加し、科目群にとらわれず自由に授業を選択できる余地が広がった。

 一方、専攻語学・専攻語学研究・副専攻語学の履修単位数は、改正前と同数を保っている。このことは本学部が外国語学部として徹底した語学教育に軸足を定めつつ、時代の変化に柔軟に対応できる「豊かな人間性」を育成する教育に重きをおいていることを示している。増設された日本語学科においては、専攻語学と副専攻語学の履修単位数の合計が他学科より2単位多くなっているが、これは前述のように日本語学科が副専攻語学としての英語教育に特に力を入れているためであり、これに伴って「任意の選択科目」の単位数を14単位としている。2003年度(平成15年度)より英米語学科においても「任意の選択科目」の単位数が14単位となったが、これは、超少人数クラスで行われるPower-up Tutorial が当該年度より開始されたことに伴い、専攻語学の履修単位数が2単位増加したことによるものである。

 現行のカリキュラムにおける科目群・科目系列ごとの履修単位数は、別表1に示す通りである。本学部においては学部の性質上、外国語科目に相当する副専攻語学が専攻語学と同じく専門科目群に含まれており、この2系列から履修すべき単位数は卒業所要総単位数の約45%を占める。これら2系列を含めた専門科目全体の履修単位数は、卒業所要総単位数の約60%である。これに対して、「幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵養する」ための科目を擁する共通科目群の履修単位数は卒業所要総単位数の約20%であるが、これに「任意の選択科目」を加えると約30%となる。「任意の選択科目」の単位には、規定以上に履修した共通科目や専門科目の他に、海外研修・検定試験・卒業論文や「全学開放科目」に指定された他学部・他学科の科目の単位が算入されるが、これらは「専門の学芸」を踏まえて更に幅広い教養と総合的判断力を身につける機会を提供するものである。また、本学の理念・目標を支えると同時に、国際社会でのコミュニケーション・スキルを伸ばし「豊かな人間性を涵養する」場であるゼミナール科目の履修単位数は、基礎・専門の2系列合わせて卒業所要総単位数の約10%を占める。

 上述した単位数の量的配分は、外国語学部としての本学部の特性を踏まえれば適切であると判断できる。また、上記の卒業所要単位数を修得させるため、本学部は別表2に示す通り、各科目群・科目系列ごとに相当数の科目を開設している。既述のように英米語学科では更にきめ細かな指導を目指して専攻語学の必修科目にPower-up Tutorialを加えたが、平成16年度よりフランス語学科・中国語学科・日本語学科においても同様の科目が増設されることが決定している。 また、副専攻語学に関しては近年新しくポルトガル語が加えられた。このように本学部では時代の趨勢や現状の反省をふまえ、常に十分な科目数を開設するべくカリキュラムの検討・改善が行われている。

外-別表1 卒業所要総単位数 注:括弧内の数字は平成15年度英米語学科入学者に適用
系   列 単位数
英米語 仏語 中国語 日本語
共通科目 共通科目I(1年次) 18 18 18 18
共通科目II(2年次)
共通科目III(3・4年次)
情報処理(1〜4年次) 2〜 2 2 2
体育(1・2年次) 2 2 2 2
ゼミナール 基礎ゼミ(1年次) 2 2 2 2
専門ゼミ(3・4年次) 8 8 8 8
専門科目 専攻語学(1〜4年次) 48(50) 48 48 30
副専攻語学(1〜4年次) 8 8 8 28
専攻文化(1・2年次) 12 12 12 12
専攻語学研究(3・4年次) 8 8 8 8
その他(海外研修・検定試験・卒業論文)        
任意の選択科目の単位 16(14) 16 16 14
合計 124
2)総合教養
 国際人として必要とされるのは、外国語の能力だけではない。何のために、どのようなコミュニケーションを行うのか、その内容や方法が適切でなければならない。更には異文化を理解するための態度や能力といった、人としての根元的な素養・人間性が求められる。

 本学両学部における「一般教養的授業科目(共通科目)」を担当している教員組織としての総合教養では、本学の学生たちが在学中の科目履修を通じて、幅広く深い知識を身につけることは勿論のこと、論理的な思考力や倫理性を培うことによって、基礎的なコミュニケーション能力を高め、豊かな人間性を育むことができるよう努めている。

 共通科目群の具体的構成については、既に上で述べられた通りであるが、これらは2度にわたるカリキュラム改正により、開学当初と比べて開講科目の多様性や履修選択の自由度という面で、大幅に改善されてきた。そのため、自ら選択して履修登録した科目に対する学生(受講生)の関心も、概ね高いと言えよう。しかしその反面、科目毎の受講希望者数にかなりの偏りが見られ、クラス・サイズに上限を設けていることも相まって、希望通りの科目を履修できない学生も出ている。この点に関しては、単に受講定員や開講クラス数を増やすといった対症療法的な方策に頼るだけでなく、建学の理念・時代や社会の要請・学生の関心動向等に照らしながら、開講科目について常に柔軟な姿勢で検討を重ねて行くといった努力が、更には各学科における外国語専門教育課程との関連性を考慮し、その連携をより密にすることによって、全学的な視野から問題解決の糸口を見出す努力が必要であろう。

 総合教養としてはこれら共通科目群の他に、本学部の1年生全員を対象とした必修科目として「基礎ゼミ」を開講し、演習形式による日本語運用能力の訓練を実践している。このことも、既に上で述べられているが、「基礎ゼミ」は、これと同じく1年生対象のコンピューター演習科目(必修科目)である「情報処理I」と共に、各学科の専門科目に対する予備的基礎教育科目として、基礎的なコミュニケーション能力のスキルアップを目的とした、本学独自の性格を持つ科目である。

 以上のような総合教養の担当科目群・科目系列は、これを専ら担当している専任教員が各学科と同様の独立した組織「総合教養」を構成することによって、その責任体制の下で本学部における基礎教育・教養教育として実践・運営されている。具体的には毎月最低1回は開催される「総合教養会議」において、共通科目群の授業運営上の諸問題、教育・学習環境の改善に関する諸問題等々、様々な問題についての意見交換がなされ、問題の解決が図られている。

 また、「基礎ゼミ」に関しては、特別に「基礎ゼミ委員会/研究会」が組織されており、授業方法・評価方法・教材作成等々について、恒常的な検討・開発・研究が続けられている。更にはこうした研究体制が「基礎ゼミ」だけでなく、共通科目全般にわたって設けられることが、今後の大きな課題であると言えよう。なお、「情報処理」系列の科目に関しては、全学的な「情報教育委員会」が設けられており、当該科目の担当教員ばかりでなく、広く各学部・学科からの代表委員の出席によって、本学における情報教育のあり方が検討されている。また、これらの会議・委員会に関する情報交換では、時に学内外ネットワーク上でのEメールや掲示板 (Blackboard System)が用いられているが、まだ十分に活用されている状況にはなく、その効果的・効率的な利用も今後の課題であろう。

 また、「情報処理」「体育」「基礎ゼミ」等においては、学生たちが後期中等教育までに修得して来た知識や技術を考慮しつつ、それらと無理なく連続するよう、大学での授業内容を設定している。これらの科目では習熟度の個人差が比較的大きいので、クラス編成・個別指導といった面での工夫によって、それに対応している。

 中等教育での達成度を考慮することによって、それとの連続性において高等教育での目標を具体的に設定できるようになっている。しかし、今後の中等教育でのカリキュラムの変化や生徒の学力および体力の低下傾向に対して、迅速かつ柔軟に対応できるかどうか、また益々広がるであろう個人差に十分対応できるかどうか、授業内容の恒常的な見直しとシステムの改良が必要である。

 アンケートによる事前調査やプレースメント・テストの導入等、既に一部で実施されているが、今後はそれらを組織的に活用し、授業内容や目標設定の見直しに反映させて行くことが急務である。また、「情報処理」については、既に来年度からのカリキュラム改正が予定されており、後期中等教育での「情報」科目の導入に対応できる態勢を整えている。

3)英米語学科
 英米語学科の基本的な理念・目的は、「英語を通しての卓越したコミュニケーション能力の修得」であり、専門分野の総合的知識を確立させ豊かな国際感覚を備えた人材を養成しながら実践的英語運用能力を養うことを教育目標としている。この目標を達成するために、専門科目のカリキュラムは「高度な語学力を養成するための科目」と「英語圏の文化を深く理解するための科目」の2つに体系化されている。

 前者に含まれる「Power-up Tutorial」は、専門科目の一層の充実を図るため、今年度より1年次の必修科目として新たに開講した。学生3人に対してネイティブ1人の「超」少人数クラスを実現し、英語力向上と異文化理解の深化に努める環境をつくっている。通常の語学のクラスを2分割して行なわれる「会話・作文」では、2年次は3段階、3年次は2段階のレベルの習熟度別編成とし、学生の能力に合った環境を整えている。

 「講読・文法」は使用テキストの内容とその難易度を学年ごとに調整したり、英文に慣れるよう精読・多読両面のクラスを設けて、英文の読解力の向上と英米文化・社会への理解を深めるようになっている。「総合英語」は1・2年次に開講されるコンピューターを活用した英語教育である。「英語研究」の科目は、3・4年次に開講され、英語をより専門的に学び運用能力を高めるもので、15もの科目があり、自分に相応しい科目を選べるようになっている。例えば、放送スタジオを使用する「放送英語」、プレゼンテーションや学生相互の評価方法を取り入れた「スピーチ英語」、就職に役立つ実務的な文書作成などをも含めた「観光英語」など、魅力ある教育プログラムを提供している。

 「英語圏の文化を深く理解するための科目」体系においては、英語の運用能力をコミュニケーションの場で活かせるように、1・2年次に社会・歴史・文化など多様な側面から言語の背景に関する知識を修得する。3・4年次には、更に高度なテーマをゼミ形式で研究する。学生は主体的にテーマを決め、情報や資料を収集し、分析し、レポートにまとめ発表することが求められる。この過程を通して、専門分野の知識を深めながら、問題解決能力や自己表現力など、国際社会で活躍できる能力を身に着けるようになっている。以上のどの科目においても、実効ある教育を実施するため、担当教員間で定期的に話し合いの場がもたれ、コ−ディネイトされており、ネイティブの教員と日本人教員が分担して効率的な指導を行っている。

 また、「会話・作文」においては習熟度別クラスを導入しているが、学生の英語力にある程度の開きがあることを考えると、個々の学生の能力を最大限に伸ばすためには評価できる体制である。今後この教育プログラムに、より一層の実効力をもたせるため、3年次においても2年次同様、3段階のレベル分けを継続して行なう予定である。

 一方、3・4年次の「専門ゼミ」には25〜30名のクラスがあり、学生一人当たりへの指導に限界が出てくる。また、専門的な科目を受講する学生の側に、それを理解するに十分な教養が身についていないケースが見受けられる。更に、「専門科目」内の「卒業論文」の受講者数が毎年一学年定員の一割程度であることは、より多くの学生が卒業論文を書けるようなカリキュラム体系になっていないことが考えられる。

 本学科の教育目標の一つである専門分野の総合的知識の確立という見地から、更なる「教養」を涵養する科目が望まれると同時に、日本語運用能力のさらなる育成も必要である。「専門ゼミ」に関しては、現在のクラスの人数を半分近くに抑え、より有機的な指導ができるよう検討する。更に「卒論」につながるような内容にする必要がある。

 なお、Power-up Tutorialは今年度から導入された科目なので、教育効果がどの程度なのかを確実に示す方法がない。今後、それらの成果を的確に把握し、分析の上、指導上の資料に充てることを検討すべきである。

 以上の通り、英米語学科としてのカリキュラムの体系性は確保されており、学校教育法第52条、大学設置基準第19条とも十分適合している。
4)フランス語学科
 我々は、国際化時代の波が打ち寄せるなか、人材養成の中心的存在となるべき外国語学部が設立されるにあたって、世界共通語として英米語の次に重要な位置を占めるフランス語を修得することで、社会の要望に沿いつつ、国際的視野と判断力を兼ね備えた真の国際人を育成することを設置の趣旨に述べている。フランス語の能力に関しても、日常会話レベルを超えた運用能力を培うこと、効率的に会話力を鍛えつつ、国際人にふさわしい主体性と創造力を育むことを目的とする旨をアピールしている。その為の教育課程は備わっている。

 大学のなかで知的・道徳的・応用的能力の展開を求める学校教育法の精神(52条)と、深い教養と総合的判断力に加えて、豊かな人間性を涵養することに配慮することを求める設置基準(19条)に照らして見るとき、設立時に打ち出した方針と教育課程には、やや社会的要請と実用に焦点を合わせすぎている点が問題となろう。そこで、人間性の涵養や教養を深める点も忘れずに教育課程を再点検することが大切であると考える。

 「世界の中のフランス語」を専門的に修得することと、フランス語圏の歴史・文化・地理、フランス人の好むcivilisation(文明)を知ることとを不可分のことと強調して、52条、19条の精神に従っていくことが大切である。そしてフランス語を通して、自己表現をする実力を得ていく過程そのもののうちに現代世界をバランスのとれた知性で、また複眼的視野で見る能力が備わることを新たな理念に掲げ、学校教育法や設置基準の精神にもとることのないように常に注意を払っていくことが肝要であろう。その実施面ではカリキュラムが最重要項目であるが、講演会やこれまで当該学科が力を入れてきた短期海外研修と長期語学留学を継続させながら、更に平成16年度から実施されるチュートリアルも有機的に配置していくことを検討している。

 一方、専攻語学のフランス語に関しては、基礎のための1〜2年次のレベルを段階的に発展させていくようカリキュラム編成がなされている。また、専攻文化も並行して1〜2年次で修め、これらが専門ゼミの形で3〜4年次に引き継がれるように配慮されている。語学の基礎を踏まえた上で3〜4年次には、時事フランス語・情報フランス語など、より発展的な授業科目も配置されている。これらは専攻語学をより多角的に修得するのに役立つはずである。

 このように語学と文明の同時学習にも十分な体系性を持たせている。また、1〜2年次に基礎的な語学のために週6回も割り当て、しかもネイティブ・スピーカーと日本人との授業を併せて聴くようにしているので、一定の成果を上げていると言える。更に専門ゼミでは、理念・目的に述べられた国際人としての教養とバランスの取れた判断力をつけるよう努力しており、ある程度の目的は達成している。しかし、概して、基礎語学の授業の間での連結の悪さが、運用面での問題点として指摘される。また1〜2年の基礎を経て3年に進学した時に、講読・文法の授業に充分ついていく実力が学生にないというのも問題である。

 こうした現状に対して、1年次の基礎語学に関しては、平成16年度より、新しい統一テキストを選定し、ネイティブ・スピーカーと日本人共に同一テキストでそれぞれの持ち味を生かしつつ、統合と一貫性を失わないよう改善策を実行に移す。専門ゼミの役割も見直し、日本語とフランス語による作文能力と問題意識の開発により努めるべきである。この過程から卒業論文を書く学生の数を増加させることも考えている。
また、多読の習慣をつけさせる方策も検討中で、図書館にフランス語学科専用の読書コーナーを設置するのもその1つである。この他、新たなモティベーションを学生に与えるチャンスを見逃さないよう、教員側も努力する必要がある。

 また、上述で触れたように、フランス語学科の専門教育授業科目においては、フランス語とフランス文化についての専門教育的授業を通し、学科の理念も達成され、学問の体系性も保たれるよう配慮されている。そして、実用を重んじつつも、人格形成を重視する方向を探求しつつある。しかし、教育の現場でこの方向性を確実なものとするためには、自己を表現していく能力、取り分け、日仏両言語での文章力の向上を専門的な教育の中で実現していく工夫が一層求められる。

 他方、一般教養的授業科目の編成におけるフランス語学科の果たすべき役割としては、本学の教育目的に沿った人間教育への配慮が重要となる。

 即ち、教養教育とは、人間としての総合力を養うことである。本学科では、こうした観点から、基礎的な語学科目と共に、研究対象となるフランスについて、広範な側面からアプローチし、その文化全般についても学べるようカリキュラムが組まれている。現行のカリキュラムでは、フランスの地理、歴史、社会、文学、言語についての科目が開講されている。これらの科目は全て1〜2年次に必須となっており、概論的ではあるが総合的に学べるように工夫されている。このような総合的な学習は、学生が自身の考えをまとめる3〜4年次におけるゼミでのレポート及び卒業論文執筆に生かされている。このことは、本学科が単に外国語のスキルだけでなく、フランスという異文化の多様な姿を語学を通して学び取るという目標に合致しており、高く評価されるものである。

 上記のような1〜2年次の総合的科目と、3〜4年次における専門科目全般との関連性を重視し、教育の現場で、既に一部の教員が積極的に実施している人間教育を特に意識した講義内容の実現に向けて、学科内で一層検討を重ねれば、当該項目の完全な達成が可能であると考えられる。 また、外国語学部では副専攻語学科目として、英語,フランス語、中国語、スペイン語、ドイツ語、ポルトガル語等から専攻語学科目以外の一言語を選択必修し、1年次、2年次で各4単位、計8単位の取得が義務づけられている。

 以下、フランス語学科の専攻学生が受講する外国語科目及びフランス語学科が提供する副専攻語学科目としてのフランス語科目の2項目に分けて考える。
本学科が国際的視野と判断力を兼ね備えた真の国際人を育成することを学科理念として掲げている以上、ただ一つの言語の修得に留まるべきでなく、2つ以上の言語に精通させることを目標としている。どの外国語を選択するかは学生の自由意志に任せており、国際的に共通語として見なされる英語科目を選択し、高校までに培ってきた英語力をさらに高度なレベルへと高めようとする者、中国語、スペイン語などの別の外国語に取り組む者など、様々である。

 未修言語では問題ないが、英語科目については多少の問題があろう。高校までの学修如何でかなりの能力差が認められるものの、現在の副専攻語学科目は習熟度別となっていない。こうしたクラス編成では物足りなさを感じる学生がでてくるのも致し方ないだろう。

 また、1クラスの規模が大きすぎ、コミュニケーションを中心とした授業が困難であるのことも改善しなければいけない課題であると同時に、専攻語学だけでなく、副専攻語学においてもフランス語独自の表現の仕方を学習していく中で、複眼的視野でものを見る能力が備わることを期待している。
一方、副専攻語学科目としてのフランス語の授業は主に兼任教員に依頼しているが、授業内容,教授法等に関し、各教員に一任している感が否めない。ただ,平成15年度から、中級の授業修了時に「実用フランス語検定3級」以上の到達目標を設定し協力を要請しているが、これは確実に成果を上げつつある。平成15年度の1期修了時に実施した副専攻語学の授業に関するアンケート調査では、「新しい知識・考え方が学べたか」という項目で約90%の学生が肯定的であったものの、「身についたかどうか」という項目となると、60%と低い割合となっている。今後は「知識としてのフランス語」から「使えるフランス語」へどう移行させるかが課題となる。

以上のような状況に対し、それぞれ以下のような改善の方策が考えられる。

 副専攻語学科目として英語科目について平成16年度からは、英語の受講者を1クラス20名以下に制限することで、大半の学生が望む「話す」ことを中心とした授業を検討すると同時に、英語での表現能力を全体的に伸ばすことも重視したい。

 副専攻語学科目としてのフランス語の授業は教育内容、教授法,受講者数などをレベル別に考慮する時期にきていると思われる。現在全ての担当兼任教員からの意見、要望を取りまとめており、平成16年度から、1年次生の達成レベルの基準を示し、授業に反映させることを予定している。また、上級レベルの2科目はネイティブ・スピーカーに担当させることが決定しており、コミュニケーション能力の育成を視野に入れた本学全体の教育方針にも貢献したい。
5)中国語学科
 本学科は中国語の実用能力を用いて社会に貢献できる人材を養成する事を目標とし、また本学科に入学してくる学生は、在学中に実用的な中国語の能力を習得し、卒業後語学力を活かし中国ビジネス等の現場で活躍することを希望するものが大半を占める。よって本学科では、中国語の運用能力の向上、現代中国社会、中国文化の特質を理解するための授業を主体にカリキュラムを組んでいる。その中で専門科目の充実を心がけている。大学として実務の現場で通用する人材を育てるためには、語学力を養うだけでなく、言葉の背景にある文化的歴史的要因を理解させる事が必要である。日中関係史から現在の両国間のビジネスの現状、文化交流に至るまで、取り上げるべき学習内容が多岐にわたり、全ての課題を教授するには授業時間の不足が生じている。将来学生が中国ビジネス・日中関係の現場で活躍するためには、最低限必要な知識は何か、トータルに4年間で何を学ぶか、学科として基本方針を確認し、各教員の役割を明確にすることが必要である。

 具体的なカリキュラム編成としては、1年次には特に発音指導に力を入れ、2年次以上は各学年とも会話・作文・文法・講読の4要素を均等に配している。低学年ではこれらの4要素を区別することはかえって学習上非効率を招くという考えから、4要素を総合的に盛り込んだ総合演習の科目を1・2年次にそれぞれ週2時間ずつ配当している。原則として、会話・作文はネイティブ教員が、文法・講読は日本人教員が担当している。3・4年次には専門ゼミナール、専攻語学研究の授業を通じて中国語の資料を直接利用して中国文化と中国語圏で生じている現実の問題を理解することを目標としている。

 大学入学後初めて中国語を学ぶ学生を対象にカリキュラムを組んでいるため、低学年では発音、文法など、全て一からスタートさせることになる。その後4年間で中国語の日常会話をマスターし、卒業後専門を活かした業務に就くための基礎を築くには、授業内容を濃くし滞りなく学習を進めていく事が必要である。現状、この学習進度に適応できない学生が毎学年一定の割合で出てきている。これらの学生には補講を行い、基礎学力を確実に養うよう指導している。

 また、3年次以上になると、既に身に着けた語学力を用いて中国の文学や社会に関わる専門的な内容にかかわる授業を開講している。本学の学生は語学力の向上に直接結びついた授業、並びに実務的内容の授業を選択する傾向が強く、中国経済、中国語の各種検定試験、中国語通訳等に関連する授業をより多く開講するカリキュラム編成を取っている。

 専門ゼミナールは、教員と学生が中国の社会と文化に関連する具体的なテーマについて学生が意見発表し教員と議論をすることが目標である。しかし現実には履修者数の問題から学生の発表の機会を十分に確保できていない。ゼミナール形式の授業は大学教育の核となる存在であり、少人数のクラスで学生が十分意見を発表する機会を確保しなければならない。この点については、履修登録以前に学生の希望をアンケート調査し、各授業の人数配分を学科で考慮するなどの措置も検討していきたい。これらの授業編成においては、低学年の語学の基礎力を養う授業から、大学生として理解すべき専門知識を教授する高学年の授業への移行が課題である。

 3年次以上でも、語学と切り離し、専門知識を講義する授業を開設することも必要である。中国社会に関する知識の幅を広げる事でさらに会話能力も向上させることができる。また、様々なメディアを活用し、授業を活性化する対策を考えたい。

 語学の習得は初級から上級に向けて段階的に学習する事が基本である。よって本学科では1年次から専門教育科目の履修を始め、4年次に至るまで順次より高度な内容を学習するようカリキュラムを編成している。また、単に語学力だけでなく、日常会話の域を越えて中国の文化や社会制度に関わる内容を中国語で理解するために必要な基礎知識を習得するために1・2年次には中国文化に関する講義形式の授業を必須科目として履修を義務付けている。

 1・2年次は中国語の必須科目と上述の「中国文化」に関する科目を履修し、3・4年次は、既に習得した中国語を用い、専門ゼミナール等、専攻語学研究の授業を通じて中国の文化、経済、時事問題等を理解することを目標としている。しかし、学習者にとっては2年次から3年次への移行時に、学習内容が急に高度になるために理解するのに困難を感じる者がある。3年次以降、経済や社会問題等、現実を反映した資料を講読する段階になって初めて、1・2年次に学習した「中国文化」の授業の意味を理解する者もある。よって2年次から3年次にスムーズに学習段階を進めるようにする事が課題である。具体的には、高校時に世界史を学習していない学生は中国史について基礎知識を欠く場合が多いので、これらの学生に対して学習課題を与えるか必要な知識を得るために有効な参考図書・映像資料を提示するなどの対応を考えたい。

 また、フランス語学科と同様に中国語学科の学生は、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語の中から1つを副専攻語学として履修する。副専攻語学の授業時間は1・2年生それぞれ1学年につき90分×週2回履修し、1年次に選択した外国語は2年次に引き続き履修しなければならない。中国語学科で英語を選択している学生に対しては、英語教育の効率を上げるために、平成16年度から1クラス20人以下の少人数クラスを実施することとしている。

 一方、他学科の学生が副専攻語学として中国語を履修するケースは非常に多い。例えば、本学部全体の中で英米語学科の学生が最も多く学部全体の3分の2を占めるが、英米語学科の学生の約半数以上が副専攻語学として中国語を履修している。実用的な会話能力の向上を重視する授業に対して、副専攻語学として中国語を履修する学生の学習意欲は概して高い。しかし1クラスの人数が30名を超えるものもあり、発音・会話などの個人指導の時間の確保が難しい面が有る。少人数のクラス編成を実現する為に、平成17年度から、副専攻語学の中国語のクラスの人数を現行の約半数(1クラス最大でも20人以下)にするべく、現在準備中である。

 また、中国語学科では、中国語を専攻する学生として中国に対して最低限必要な知識を、「中国文化」(計6科目12単位)という1・2年次配当の必須科目の中で講義している。ネイティブスピーカーと中国語で会話をするためにも、中国の文化・歴史・制度に関する基礎知識が必要である。中国の歴史、社会、言語など6科目各半期2単位の授業の中で、最低限必要な事項を講義する形式をとっているが、講義内容の取捨選択が課題である。特に高校時代に世界史を選択していない学生にとっては中国の歴史に対する知識が欠落し、世界史を選択していた学生との学力格差が著しい。また、本学の中国語学科の学生は実務への指向が強く、古典文学や歴史そのものへの興味が低く、授業への積極的な参加を促す為に工夫が必要である。正しく事実を認識することによってはじめて、異文化を尊重する意識を養う事ができる。随時報道される日中関係の時事ニュースに即し、現実社会で何が起こっているのか、授業で紹介することを心がけたい。この「中国文化」は、講義形式で中国語学科の専任教員が授業を担当し、授業内容と学生の理解に対し責任をもつ態勢をとっている。授業時間内に卒業までに理解してほしい学習内容をすべて講義する事は不可能であり、授業外に学生に自習を促す事が必要である。参考書籍・ビデオ資料など自習課題を提示し、それらの課題を確実に自習する方式を考えなければならない。この点に関して、現在学科内で、学生に読ませたい参考図書のリストを作成しており、その利用方法について今後具体案を煮詰めたい。
6)日本語学科
 日本語学科は、ますますグローバル化が進む21世紀の将来に向けて、日本語を通して、日本国内だけでなく世界に貢献できる人材を育成することを目指している。日本語を世界の言語の一つとして位置付け、日本語、日本語教育及び日本語運用を日本文化との関連において教授・研究し、それに対する学生の知識と理解を深めることを目指すものである。この目標は、国際的に日本の重要性が増す今日、日本語を学び、日本をより良く理解しようとする世界の若者の増加に対応しようとするものである。なお、日本語の的確な使用能力は日本の社会での必要な能力であり、日本の若者に高度な日本語能力養成を狙うものでもある。更に、日本語学科は、深いレベルでの日本語理解には、日本語と英語の構造の理解が是非とも必要であるとの考えに立ち、学生に対する英語教育を特に強調している。

 また英語能力は、将来、国際的に発展して行くべき若者にとって必要な資質であるわけで、その教育は日本語学科のカリキュラムの重要な部分を占めるわけである。つまり、日本語学科のカリキュラムは、理論と実用を常に結び付けることを心掛け、日本語の理論を研究する日本語学、日本語を実際に運用できるための口頭表現、弁論討論、文章表現、創作、またこれらと必然的に関連している日本文化の研究、そして、それらを応用した日本語教育学の研究に力を注いでいるわけである。これらの専攻科目は英語の副専攻科目で支えられている。英語は本学科では特に重要な科目と位置付けられている。

 このように、本学科の専攻科目(日本語)及び副専攻科目(英語)は、日本語に関する広く深い知識を目指し、理論と実用という基本に沿った体系を有しているわけで、学科の理念と目標を達成するための体系的且つ適切なカリキュラムだと言えよう。日本語教師として必要な知識、能力が身につくと同時に、国語教師のみならず英語教師の資格も取れるようになる。また、教師志望でない学生も、日本語、英語の運用能力が高度に養成されるため、将来の世界に日本語と英語を通して貢献できるはずである。従って、日本語学科の目標は、学校教育法52条の精神、及び、大学設置基準第19条に完全に沿うものである。

 日本語や文化の専門科目では、学生が直接行った言語や文化に関する調査について口頭発表したり、報告書にまとめるなどの作業を数多くこなしており、情報収集をはじめ自分自身で考える力が身についたと言える。日本語教育関連の科目では実際に教案作成をし、本学の日本語教育センターでの実習や正課外学習として海外での教壇実習に参加する学生も多い。

 英語の授業でも、学科の教育目標に沿い、ネイティブスピーカーが担当する英語講読の授業では、ただ英語の解読、内容把握に留まらず、文章構造を修辞学的な立場から分析し、種々の記事や文献を通して、外国人の物の見方や日本の様々な現象の捉え方をも学んでいけるよう工夫されている。英語を読むことが最終目標ではなく、英語を使って情報を収集する訓練をしている点は評価に値する。尚、総合演習では、会話の授業で取り扱った内容を文章化するとともに、学生の興味のあるテーマや与えられたテーマで毎週作文し、ネイティブスピーカーに書き方と内容へのフィードバックをもらうというように、コミュニケーションの道具として英語を使う状況を与えている。このように、実質的な国際語である英語を副専攻語学に設定し、4年間で28単位(最高40単位)を取得することが可能なカリキュラムであると同時に、3週間半の海外研修(2単位)を2000年度より実施している。なお、半年乃至1年間の交換留学制度もあり、副専攻語学である英語圏の大学に半年留学すると最高15単位、1年間では30単位まで留学先での取得単位の読み替えが可能なため、4年間で日本語学科を卒業できる仕組みになっている。

 日本語学科は平成15年3月に最初の卒業生を社会に送り出したわけだが、必ずしも教師として、或いは社会人として、日本語運用能力、日本語教育能力、英語運用能力に十分な実力を持って卒業したかどうかは疑問の残るところである。また、日本語教師志望の学生に対する教育実習の方策が十分に確立していないという弱点がある。従って、学生に魅力があり、実効ある教育を提供するためにも、日本語教育実習改善と英語会話力向上を現実的可能性として考えている。前者には本学の日本語教育センターの協力と韓国における本学との提携大学の日本語学科の協力が得られるように努力する。英語教育では、平成16年度4月より新入生は全員、既存の授業数に加え、1週間に1度「Power-up Tutorial」の授業を受けることが予定されているのでその成果に期待する。日本語学科の学生に相応しいPower-up Tutorialの内容は現在検討中であるが、英会話・作文、英語講読・文法、英語総合演習で扱うテーマや内容のみならず、日本語の専門科目の内容ともある程度連動させ、更に統合的な英語のカリキュラムを検討中である。

 なお、国語教育と日本語教育の両方の視野を持ち、国内外で活躍できる人材はもとより、語学教育以外の分野での人材養成のために、専門科目の一層の充実を図る必要がある。その第1段階として、教員志望者が3年次に履修可能な、国語教育法と日本語教授法を比較対照する「比較言語教育法」及び、更なる日本語の実践能力の向上を図るため3年次、4年次開講の「実践日本語I」「実践日本語II」を新設する計画があり、具体的な内容については、今後学科会議や担当者間の話し合いで検討する予定である。