自己点検・評価

自己点検・評価インデックス>> 第1章第2節 (2)国際経営学部

理念・目的・教育目標

第2節 学部及び大学院の教育目標

(2)国際経営学部

 国際経営学部は平成6年(1994年)、名古屋外国語大学の2つ目の学部として開設された。グローバル化が進展する時代にあって、外国語に習熟し、国際社会について深い理解を備えた人材を養成するという名古屋外国語大学の建学の理念に基づいた学部としてはすでに外国語学部が存在していた。それに加え、2つ目の学部として、国際経営学部を発足させた理由は主に3つある。一つは、日本が国際社会に貢献できる分野として挙げられるのは何よりも経済・経営の分野であるということ、2つ目は、本学が位置する中部圏は日本の製造業の中心地の一つとして、経済・経営の理論に精通し、かつ国際的な理解を有する外国語に堪能な人材をとりわけ必要としているということである。3つ目は、外国語大学において、どこに向かって、あるいは何のために語学を習得しなければならないかを明示した学部も必要であると判断したことである。進路としての経済・経営の分野を明示し、この分野の理論と現実を十分に学び、かつそこで必要とされる外国語を習得できる学部が必要であると判断したのである。こうして、国際社会、とりわけ、国際ビジネスの分野において活躍できる人材を育成するという理念のもと、国際経営学部は発足した。School of Global Business and Economicsという英語名称はそうした理念を表わしたものにほかならない。

 国際経営学部は上述の理念に基づいた教育目標を掲げている。一つは、国際社会におけるコミュニケーション能力を有する人材を養成するということである。そのためには、いまや世界的な共通語となりつつある、英語の習得が不可欠となる。この観点から、英語教育では、Communicative Englishすなわちコミュニケーションのための英語の習得を目標に掲げてきた。文学中心の伝統的な語学教育ではなく、ビジネスで必要とされる英語を視野に入れた、実践的な英語の習得が可能な英語教育が目指されたのである。2つ目には、国際ビジネスを展開するため具体的な経済・経営の専門的な内容の習得を行うということである。専門科目群によって徹底的なその教育が目指されている。3つ目には、国際ビジネスの展開のために必要不可欠な、国際社会理解のための教育を行うということである。世界の各地域や国際関係にかかわる科目によってその教育を行うことが目指されている。4つ目には、こうした知識を実際に現場で生かすための創造性を養うということである。4年間一貫して行われるゼミナール科目などを通してこの目標の実現が目指されている。

 以上の理念・目的と教育目標に基づいて国際経営学部が開設されてから平成16年(2004年)3月で10年が経過することになる。グローバル化する時代に対応できるコミュニケーション能力を持った人材の養成という本学の共通理念のもとに、とりわけ、進路を明示しその目標に向かって教育を行っていくという本学部の理念・目的は現在でも有効性を失っていないと考えるが、しかし、現実には、近年、国際経営学部への進学を希望する受験生は減少の一途をたどっている。社会の要請に国際経営学部が十分に応えているのか、真摯な検討が要求されたのである。

 本学部は自己点検評価の作業の中でこの状況を次のように分析した。

 グローバル化の波は国際経営学部開設当初の予測を超えていた。ビジネスの分野に限っても、グローバル化は、従来型の物つくりを中心とした分野に限られてはいない。流通業やツーリズムを代表とするサービス業など、その他の分野においてもグローバル化はいっそうの進展を示している。またそれは「国際経営Global Business and Economics」という名称で考えられるようなビジネス・経済の面にだけ限られているものでもない。冷戦終結後の世界の多極化、国際的人的移動の活発化、環境問題の深刻化などによって、とりわけ国際協力の分野の重要性が増している。あらゆる分野において国際交流の能力を持った人材が今の日本において求められているのである。

 さらには、グローバル化の進展はまた、「国際社会」の範囲をいっそう拡大して考えなければならないことが明らかとなった。従来の経済中心の見方ではややもすれば、主要貿易相手地域としての欧米が視野の中心に据えられてきたが、現在では、ビジネスの分野一つをとっても、中国を初めとするアジア地域を考慮しなければ何も始まらない状況になっている。また環境問題や国際的な人的移動の問題をとっても、国際社会はまさに地球規模の存在として考えられなければならない時代に入っている。

 すなわち、グローバル化がビジネスの世界においても、これまでよりも幅広く理解されねばならないこと、またグローバル化はビジネスの分野に限られたものではないこと、国際理解としてはまさに地球規模での国際理解が求められていること、こうした点がこれまでの国際経営学部10年の経験の総括として明らかになったのである。いいかえるならば、国際経営学部の従来の経営学中心のカリキュラムでは、こうしたグローバル化には対応しきれないことが明らかになってきたのである。たしかに後述するように、2001年度から、新たな状況に対応するために、「国際観光論」や「NGOと国際ボランティア」などの新しい科目を導入する、カリキュラム改革を行っている。しかし、こうした部分的な手直しではもはや21世紀の国際社会に対応できる人材を教育できるとは思われない。言い換えるならば、「国際経営」という学部名称はもはや狭すぎるものになったといわねばならないのである。

 こうした反省の上に、本学では、国際的に活躍すべき分野を明示し、そのための教育を徹底して行うという国際経営学部設立の趣旨を受け継ぎながら、新たなグローバル化に対応できる人材を養成することを目指し、「現代英語学科」「国際ビジネス学科」の2学科からなる新たな学部「現代国際学部」を立ち上げることとした。国際社会におけるビジネスの重要性は決して減少してない。むしろ、日本が今後国際的に生き残っていくためにはいっそう重要となるであろう。国際ビジネス学科は、したがって、国際経営学部の成果を継承しながら、いっそう徹底して、国際的なビジネス分野で活躍できる人材を養成することを目指すものである。現代英語学科は、英語が必要とされる分野でありながら、これまでの国際経営学部においては十分には取り扱えなかった分野を重点的に取り扱う。国際ボランティア、国際ツーリズム、国際ジャーナリズムなどの諸分野、および交流のスキルとしての英語の教育にかかわる分野などを設けている。

 両学科とも、しかし、今後いっそう英語コミュニケーション能力が求められることから英語教育を更に強化している。同時に、世界の多極化を前提とするならば、単に英語だけでなく各地域の言語と文化についても深い理解を持つことが要求されることから、Area Languagesという名称で副専攻語学を必修化した。また、学生が社会人として必要な能力を身につけ、有用な人材となるため、単に講義による学習だけではなく、さまざまな形での演習形式の授業を積極的に取り入れることにした。演習科目による教育を多く受けることによって、学生はより実践的な能力を身につけることができるであろう。

 新設の現代国際学部は、国際経営学部のよき遺産をも受け継いでいる。4年間を通してのゼミナール形式の授業によって、国際経営学部は教員が学生一人一人を把握するというユニークな体制を実現していた。新学部でも、現代の学生に求められるリテラシー能力の徹底的な教育を目指す1年次の「研究基礎トレーニング」科目から始まり、2年次の「基礎ゼミナール」、3・4年次の「専門ゼミナール」に至るまで、教員が学生一人一人を把握し、それぞれの個性にあった指導を行うという体制は貫かれている。

 こうした特徴をもった「現代国際学部」によって、国際経営学部のグローバルな領域における多角的な問題意識と問題解決法、コミュニケーションのための英語の教授法、4年間を通じてのゼミナール形式のクラス運営などから得られたこれまでの経験が生かされ、21世紀のグローバル化に真に対応できる有用な人材が育成されうると考えている。