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川合孝弥さん



外国語学部 川合孝弥さん

人生の分岐点~オーストラリア留学~

外国語学部 英語教育学科 4年 川合孝弥さんが、オーストラリア留学とその後の活動について教えてくれました。

‘Changing place, Changing time, Changing thought, Changing future’

ヨットの写真

皆さんはこの言葉を知っているだろうか。この言葉はベネチア、ペギーグーゲンハイムのミュージアムに飾られており、私も訪れてみたい場所の一つである。この言葉は私が留学を通して大切であると感じた言葉であり、これからも大切にしたい言葉である。

さて、今回は私の留学体験記を綴りたいと思っている。

都会と自然が美しく調和する街、ブリスベン

私は三年時にオーストラリアはブリスベン、グリフィス大学に一年間、留学をした。シドニー、メルボルンに次ぐ第三の都市であるブリスベンは、晴天率が高く、気候や自然が魅力の近代都市である。街には近代的なビジネスオフィスが並ぶ中、ゴシックやコロニアル風の昔の建物がとてもよく調和した美しい町並みであり、少し郊外へ足を伸ばすと森林に囲まれた自然があり、動物とも触れ合うことができる。また、町を歩けば、様々な人種の人に出会うことができ、国際色豊かなところである。そんな勉強にも遊びにも最適な場所で留学をしたのだが、この留学がこれまでの人生で最大の分岐点の一つであったように思う。

鳥やカフェの写真

最近、後輩によくこんなことを聞かれる。
「先輩、やっぱり留学行った方がいいですか?」
私は迷わずこう答える。
「目的があるのであれば、行った方がいい」

こんなことも聞かれる。
「留学に行くと英語力上がりますか?」
私はこう答える。
「留学中どれだけ努力するかによるけど、上がる」
と、同時に心の中で、
「英語力よりもっとすごいものを得られる」
と思うのである。
確かに、振り返ってみると当時私が留学した一番の目的は英語力の向上であったし、おそらく留学する学生のほとんどの理由がそれであろう。しかし、帰国して気づいたことは留学中に言葉や文化、すべてがまるで異なる環境でいろんな人に出会い、いろんな価値観に出会うことで自分自信の考え方や価値観も変わっていたことである。

ここで、私の人生を変えた、二人を紹介したい。

ホストマザーのローズは素晴らしい料理人、そして人生の案内人

ジャコランタの花の写真

まず、一人目はホストマザーのローズである。私が最初の半年間、ホームステイをしていたとき、大変お世話になった。イタリア系オーストラリア人であり、ご主人は私が生まれる前に他界されていたので息子さんと二人暮らしだった。話が逸れるが、実はオーストラリアにはかつてイタリアから移民をしてきた人がかなり多い。皆さんがご想像の通り、パスタなどといったイタリア料理がほぼ毎日、食卓に並んだ。お陰で留学中に体重が十キロも増え、日本から持っていったパンツが履けなくなったほどである。ローズは素晴らしい料理人であり、そして素晴らしい英語の先生でもあった。私が英語の質問する際にも嫌な顔一つせず答えてくれ、食事が終わるといつもお話(説教じみたものではあるが)をしてくれた。また、なかなか英語力の向上が感じられず悩んでいたときも、いつも励ましてくれた。悲しいことに、ローズは私が日本に帰国する数週間前に突然亡くなった。しかし、今でもローズが亡くなる数週間前に私にかけてくれた言葉を忘れられない。‘I’m always behind you.’(どんなときも応援してるよ、見方だよ)。私が‘Grazie’と心の中で言うと、ローズが笑顔で‘Prego’と言ってくれるような、そんな気がするのである。ローズの毎晩の話が私の今の生き方や考え方に影響を与えてくれている。

文化・価値観の多様性を教えてくれた友人、エイドリアン

友人の写真

エクアドル出身の友人 エイドリアン

私の人生を変えた二人目は、エクアドル出身のエイドリアンである。彼は半年間、私と語学学校で勉強していた友人である。南米人の中には、日本人ほど律儀でなく、時間にルーズな人もいるようだが、彼は中でも特に時間にルーズでレイジーな人だった。
こんなエピソードがある。ある日、私と私の友人、彼とでバス停で待ち合わせする約束をしていた。しかし、待ち合わせ時間を30〜40分過ぎても彼は来ないのである。さすがにしびれをきらした私は、彼に電話をしてどこにいるのか尋ねた。すると、何やら寝ぼけた声で「今からシャワー浴びるからあと5分待って」と言うのである。さすがの私も頭にきて言い争いになった(彼は遅れたことをそんなに悪いことだと思っていない)。そんな彼と留学中に多くの時間を過ごし、ずいぶんと私の性格が寛大になった気がする。
私が今思うことは、日本で当たり前のことが世界では当たり前ではないことが多く、そういった考え方や価値観、文化の違いを受容できることが大切であるということである。それは、いくら机上で勉強して頭の中で分かっていても、実際肌で感じなければ本当の意味で理解することにはならないのではないか、と思う。

後日談ではあるが、ルーズでレイジーな彼は日本の文化を少しずつ理解してくれたようで、集合する際には時間通りに来てくれるようになった。彼はエンジニアの仕事をしているのだが、エクアドルと日本のエンジニアの能力が同じであるのにも関わらず、日本がなぜこれだけの経済大国であるか、彼の見解を話してくれた。彼は、「それは、日本人の勤勉さ、真面目さ、上下関係、そういった日本人の性格、特性のようものが要因である」と言った。私はなるほど、と感心した。

グリフィス大学

グリフィス大学

友人たちの写真

友人たちと

まだまだ書きたいことはたくさんあるのだが、留学の体験話は一旦置いておいて、最近の話をしたい。
私は現在、留学生宿舎に住み込み、留学生のサポートをするレジデンスアシスタント(RA)をしている。それは、私が留学した際にたくさんの人が私を助けてくれたように、日本に来た留学生にその恩返しをしたいと思ったからである。月に一度は必ずミーティングを開き、留学生の状況を共有したり、催し物を企画したりしている。正直、かなりの時間と労力を費やしている。しかし、留学生が帰国する際、「日本に留学してよかった」と思ってもらえるよう、日々仕事をしている。

環境を変えることが、大きな成長につながる

最後に、少しタイトルに戻って終わりたいと思うのだが、私は人が成長するためには「環境を変えること」が大切なことの一つだと考えている。その点で留学は、言葉はもちろん、文化や人の考え方すべてがまるで異なる環境の中で自分を成長させる良い機会だと思うのである。ぜひ、皆さんにも場所を変えてみて欲しい。その際に、忘れてはいけない持ち物が三つある。
一つ目に時計である。
(留学や人生においても限られた時間、それを意識しなければならない)

二つ目に羅針盤である。
(正しい方向に向かっているのか、時々確認をしなければならない)

三つ目に鏡である。
(客観的に自分をみて、そして自分自身をよく知らなければならない)

夕暮れの海の写真

皆さんもこれら三つの持ち物を持って、場所を変えてみて欲しい。時を変えてみて欲しい。
思考や考え方が変わり、そしてそれは将来を変えることになるかもしれない。