自己点検・評価

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教育研究の内容・方法と条件整備

第1節 外国語学部

(9)厳格な成績評価の仕組み

1)履修科目登録の上限設定とその運用の適切性
 外国語学部では、選択必修科目及び選択科目の多くで履修制限を設けている。また、制限を設けていない科目であっても時間割の編成上、履修は制限されている。学科により若干異なるが、各学年で履修できる単位数の上限は、概ね次のとおりとなっている。

外-履修科目登録の上限設定表
科目系列 1年次 2年次 3年次 4年次 備  考
専攻語学 12〜14 12 20 16 下年次の授業科目及び教職専門科目は、別途履修を認めている。
専攻文化 6 6    
専攻語学研究     8 8
専攻文化研究     8 8
副専攻語学 4 4 4  
基礎ゼミ 2      
共通科目 12 12 2  
体育 2 2    
情報処理 2 4 2  
40〜42 40 44 32

 上記の履修以外に下記の科目については、履修するための資格が必要である。

○英文日本事情科目(講義は全て英語でおこなわれる。留学生別科の学生との合同授業):3・4年次生対象の授業で、受講に際しては、講義開始前に実施される試験に合格しなければならない。
○特別研究授業科目(大学院の授業):4年次生対象の授業。大学院進学の有無は問わないが、受講者は1科目につき1〜2名に制限するため、希望者のこれまで取得した成績を調べ、平均点の高い学生を優先している。また、本学では4年次にも必修もしくは選択必修科目が設けてあり、3年次修了時点で卒業必要単位を全て充足することは出来ない。

 以上のような履修科目登録上の制限は、大学設置基準で定められた予習・復習の時間を確保する目的はもとより、学年毎の段階的履修という観点からも望ましい。ただ、じっくり取り組むべき、専攻語学研究や、特にゼミに当たる専攻文化研究を3年次で一度に2科目ずつ(計8単位)履修してしまう学生が多い点を問題視する学科もある。この点については、学部レベルで再考する必要がある。

2)厳格な成績評価を行なう仕組みの導入
 日本の一部の大学で導入されているGPAについて、本学でも教務委員会を中心に慎重な検討が加えられた。しかし、本学が持つ独自の事情とGPAの特性がうまく適合するかどうかについてさまざまな意見が出され、まだ、その導入について具体的結論をみていない。

 概して言えば、GPAは、登録履修科目に対する評点の平均値を明示しようとするシステムである。とすると、登録科目数が少ない場合、実態を比較的正確に反映する数値が得られやすい。一方、登録科目数が多くなるとそこから生ずる数値は低下しやすくなり、実勢を必ずしも 如実に示しているかどうか疑わしくなる。このシステムに客観的合理性を与えるには、登録科目数の一定化を図るなど前提条件の整備が必要となろう。そうなるとそれがさまざまな方面に波及するため、本学の諸制度との関連について幅広い議論を進め、また、一方でよりベターな方法をも模索して検討がなされている。

 本学には所定の成績評価方式がある。A、B、C、D、E、Fの6種の記号で評価する。(61頁「成績評価法、成績評価基準の適切性」参照)そのうち、単位不認定を示すものとしてD−Fがある。厳密に言えば、Dは不合格、Eは試験欠席、Fは、受験資格を認めないー失格である。受験資格は2/3以上出席した者に認められる。E、Fを「成績評価」として一括することは論理的には少し疑義が生じよう。即ち成績評価とは提出された答案に対する担当者の判断の具体化である。ところが、E、Fについては、評価づくりの対象となる客観的資料(答案やレポート)が担当者の手元にないわけで、それに評価を示すことは論理的には不可能と言わざるを得ない。その意味では、それらは、A−Dとは異なるカテゴリーに処理されるのが妥当である。

 そのうち、Eは、「試験欠席」のための単位不認定なので、平常点だけで判断する評価を形成するとすれば、Eそのものは他の評価に変更されることもあろう。Fは本学が定めた出席条件を超えて欠席を余儀なくされることも少なくない。そのため、本学では「公欠」制度を持ち、学生の欠席理由が社会通念上、妥当と認定される場合に厳しく限定して、それを適用することがある。

 しかし、「公欠」事由についての解釈、換言すると教員の裁量にはかなり異同があるのが実情である。確かにその教育上の裁量は尊重されなければならないが、複数の担当者間で学生の同一学習行為についてその判断が極端に分化することはさけなければならない。そうした状態は学生に不満と不信を募らせるというマイナスの結果しかもたらさない。評価の厳正にして客観的合理性が夙に求められる所以はここにある。そのためには何らかの適切な基準設定が必要であろう。そして、担当者はそれをベースに妥当な教育的配慮を加えることが本来あるべき姿であろう。このことは原則への極度の固執や硬直した評価姿勢を奨励するものではない。

 また、裁量、教育的配慮という美名のもとで評価や公欠に関する原則を等閑視するかのような態度は厳に慎まなければなるまい。担当者は、その担当科目について良識と専門的知識に基づき、多角的な視点から適切な方法によって、沈着冷静、厳正公平に客観的合理性を持つ成績評価を行わなければならない。併せて、担当者は評価について、いわば結果責任を負うことは当然である。それらの論考を踏まえて、「評価」の厳正さや客観的合理性への方法として下記の方途を提言したい。
  • 評価対象をもう少し細分化して、例えば次のような項目別に比率化する。そしてシラバ スに明示するのがよい。期末試験又はレポート70%/出欠20%/受講態度10%
  • 欠席」が受験資格と密接に関係する以上、どの授業でも何らかの方法で出欠チェックを行うことが望ましい。特に大クラスの場合、それについての検討が必要である。また、一部のゼミ科目では評価をはじめ出欠チェックが教師と学生の「信頼関係」を重視するあまり、甘きに走る傾きがあるとの声がある。そうだとすると、「厳格な評価」の目指す方向からは逸脱する。「信頼関係」は「信頼関係」として厳格な評価を堅持する厳粛性こそ学生に教育すべきキーポイントである。
  • 同種科目については、担当者間で評価基準のあり方について十分会議し、そこから得られたコンセンサスに基づき至当な評価を示すべきである。但し、その場合1クラスについてA,B,C,Dの配分比率、すなわち相対評価に執着することはかえって無理が生じよう。例えば優秀な学生が多数を占めるクラスでのA,B,C,Dの杓子定規な比率分化は、教育上不当と言わざるを得ない。このクラスの場合、Aの評価が多くなるのは当然の成り行きである。
  • 「公欠」扱いについて担当者間で相当な格差があるのは適当でない。各学部、各学科にそれぞれの事情があるにせよ、やはり全学的な一定の評価を持ち、担当者はその趣旨を十分認識してその扱いに慎重を期すべきである。従って、その基準づくりと確認作業は教務委員会からスタートし、各関係機関で合意を取り付けなければならない。
  • 1つの科目の成績評価が担当者より教務部長に提出された後、教務部長はその科目のA−Fの配分比率を一定期間学内に公表する。この措置は本学の全教員(専任、特任、客員、および非常勤)の全科目を対象とする。この方向で進むことが、成績評価をより厳正さと客観的妥当性を確保することにつながるのではないかと思われるので、前向きに検討する必要があろう。
  • 評価結果について学生からの照会期間を設定する。担当者は、それに誠実に対応出来得る答案その他評価形成に関するデータを一定期間保管することを義務付ける。学生からの照会への対応は担当者の全責任によって行われるべきことは言うまでもない。要するに、担当者の成績評価責任の明確化である。
  • 学生から苦情が寄せられたとしても、成績評価の変更は原則として認められない。
  • この評価に関する「申し合わせ」は、本学の全教員(専任、特任、客員及び非常勤)に適用されるものとする。成績評価の厳正公平化は最も重要である一方、様々な事情が内在し、困難な問題であることは疑いない。しかし、だからと言って従来からの一部で指摘されてきた「なれ合い」主義で安易に片付けるという悪循環は、今後の大学の状況を見据えた場合、かえって大学への社会的信用を失墜させる危険をはらむ。教育の荒廃、若者のモラルの低下が社会問題化しているが、教師と学生の「信頼関係」という名の「なれ合い」主義または教師や親の放任姿勢がその大きな一因ではないかと考える。成績評価は、責任ある教育という点で、大学にとっては根幹に直結する重大な問題である。
3)成績評価法、成績評価基準の適切性
 本学の成績評価は、試験[定期試験、平常試験(小テスト等)、追試験、再試験]及び授業への出席状況により行われる。試験の方法は、筆記試験、口述試験、実技試験、レポート試験等担当教員が最も適切であると思われる方法で実施される。授業への出席に関しては、成績評価の対象にするとともに、欠席時数が授業時数の3分の1を超える学生には、定期試験の受験資格を与えない。

 追試験は、病気等不測の事態により定期試験を欠席した学生に対し行う試験である。

 再試験は、定期試験及び追試験に不合格になった科目についてその試験に合格することになって卒業資格が得られる場合に限り受験を許可する試験である。

 本学の履修学科目の成績は、試験その他の成績を考慮して次の評価を行っている。

A+  (100点〜90点)
A  ( 89点〜80点)
B  ( 79点〜70点)
C  ( 69点〜60点)
D  ( 59点〜 0点)   不 合 格
E             試験欠席
F             失  格

 上記のほか、単位互換による単位認定、大学以外の教育施設等での学修(認定留学、検定試験の認定)、入学前の既修得単位の認定、特別な科目の単位認定(Power-up Tutorial、海外研修)は、S(認定)として評価を行っている。

 こうした成績評価に関する規定そのものには問題はない。但し、教育の現場における実際の成績評価の段階で、大抵の場合、成績評価の基準が教員の裁量に委ねられているため、評価の公平さと厳密さが問題になるであろう。この点は、学部内でも問題点として挙げられている。しかし、学科によっては、共通の採点基準を設定したり、統一試験の実施を計画するなど、より厳格な成績評価を行う仕組みの採用、若しくはその実現に向けた検討がなされている。今後は、前項 2)で述べた方法と合せて学部全体の問題として、厳格な成績評価の仕組みの考案と、その導入の実現を図るよう検討を進めていかなければならない。
4)各年次及び卒業時の学生の質を検証・確保するための方法の適切性
 本学部では、段階履修制度を設けており、一定の科目の単位が修得出来ない場合は、次年度もしくは、次の段階の科目履修が出来ないことになっている。これは専攻語学の科目に適用されており、学力を段階的に養成するために望ましい制度である。

 また、外国語学部では、1・2年次開講の必修専攻語学すべての科目を対象として、各学科で定める単位数以上修得できない場合は、2年次若しくは、3年次開講の必修専攻語学を履修することが出来ない。更に、次年時に、これまで合格した科目を含め、全ての必修専攻語学を履修し直さなければならない。但し、この適用は各年次1回に限られるので、2回目の適用を受けることとなった場合は除籍となる。

 なお、1・2年次については、こうした規定を考慮した上で、年度末に学科会議を開き、各学生の当該年度における専攻科目の成績を吟味した上で、進級させるかどうかを決定している。 これは、早い段階で学生の学力を総合的にチェックすることで、一定のレベルに達しない学生を適切に指導し、段階を経て学力を向上させるために不可欠な方法である。

 また、4年次においても、年度末に各学科で卒業判定会議を開いており、これは特に単位不足で卒業ができない学生の適切な指導を、学科の教員全員で検討する重要な機会となっている。

 この他、教職課程を履修する場合は、履修登録時点で、英検2級以上の取得、又はTOEFL460点以上の認定を受けていなければいけない(英米学科の学生については両方の条件)という規定を設けている。また、学科によっては、更に厳しい規定を独自に加えているケースもある。これは、教職を志す学生に対して、学力向上に向けた努力目標を明確に示したものであると同時に、一定の学力水準に達した者にのみ教員免状を与えるための適切な措置である。
5)学生の学習意欲を刺激する仕組み
 各学科ごとでアンケート調査を実施して、専門科目について学生の理解度や要望を把握しており、それらを参考に講義内容の改善に努めている。

 アンケートの結果(講義の感想、質問など)を毎講時プリントにして学生に配布しているものもある。その際、質問への回答がなされるが、このことが積極的に授業に参加する機会になったと多くの学生が答えている。

 また、語学研修など全学の枠組みで実施されている制度の活用の他に、留学前後の学生など特に優秀な学生のための特別クラスの創設や、各学科のフロアに、学生専用のコーナーを設け、自由に、雑誌や新聞その他専攻言語圏に関する資料を閲覧できる環境の整備などを行っている。

 もっともこれらは学習意欲を刺激し、勉学に取り組ませるための足がかりに過ぎず、専門性の高い語学力、論理的な思考力の育成に繋がる様な仕組みを作るのが急務である。

 例えば、2年次、3年次になっても自ら考える力を持たない未熟な学生が一部に見られ、これらの学生は読書の習慣すらない。平成14年度より、オリエンテーションで各教員推薦の図書一覧を配布する試みを行っているが、今後はそれぞれの学科で共通の必読文献リストを与え、レポートを提出させたり、ゼミで学生の知的好奇心を一層刺激し、これを卒業論文の指導に繋げるなど、学生の質を確実に高める堅実な試みを行うことも検討している。