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1月9日(土)『中東激動と日本の関わり‐シリア難民と「イスラム国」の行方‐』を開催しました

2016年1月26日
1月9日(土)『中東激動と日本の関わり‐シリア難民と「イスラム国」の行方‐』を開催しました。
 2016年1月9日(土)14時00分~16時00分、WLAC主催講演会が開催されました。講演者は、中東ジャーナリストである川上泰徳氏で、司会はWLAC副センター長、国際教養学科教授の佐藤都喜子でした。以下は講演会からの抜粋です。
講演者紹介(佐藤)

 川上先生は、国際報道で貢献のあった日本新聞協会加盟社や関係者個人に贈られるボーン・上田記念国際記者賞を受賞されている中東ジャーナリストです。長く朝日新聞社に勤務し、活躍されましたが、2015年からはフリージャーナリストとして中東と日本、半々の生活をされ、中東での歴史上の出来事と現代とのかかわりを探るような視点で執筆活動を続けられております。
 川上先生は朝日新聞記者時代から現地取材を重ね、現地の人々の話を聞く姿勢を貫いています。個人的なお話になりますが、私がヨルダンに住んでいました時に、保守的な地域として知られるヨルダン南部を川上先生とご一緒する機会があり、その際、流ちょうなアラビア語で部族長などとお話しされていた姿が今でも思い出されます。
講演要旨

講演者の思い -実感として感じてもらいたい-
 私は今回の講演会を通して、中東で今、実際に何が起きているのかという『実感』を、伝えたいと思います。世界の様々な動きに対して、世界全体の大きな動きを見ることもジャーナリストとしてのひとつの役割だと思っています。しかし、現地の人々はどのように考えているのか、生活はどのように変わっていくのかという部分は、実際に現場に行かなければわからないことがほとんどです。
 講演会を通して、こういうことが起こっているのかというのを『実感』として、皆さまに感じていただけたら嬉しいです。
「想像力の貧困」が問題を大きくする
 最近の中東がらみの出来事と言うとパリのテロ事件がありました。その日私は、レバノンの首都であるベイルートに、滞在していました。パリの事件の前日に、ベイルートでも40人以上が亡くなった大きな自爆テロがありました。しかし、次の日にパリの事件が起きたということで、その事件は忘れ去られてしまいました。パリの事件は市内で、襲撃や、爆弾事件が起こった大きな事件です。この続けざまに起きた二つの事件の報道を私は現地で見ていて、自分の問題としての意識が生まれてやっと、問題の重大さに気が付くものだと、改めて感じました。シリア内戦は4年を超え、20万人以上が死に、400万人以上の難民が出ているのに、自分たちのところでテロが起き、難民がなだれ込むようにしてやって来るという状況になって初めて、人々は大変な事態だと気が付くのです。それを私は「想像力の貧困」が原因と考えています。

正義の為の戦争
 空爆の犠牲者の多くは民間人です。戦争によって物事を解決しようとすることが、正義とは言えません。いくら正義の戦争といっても民間人を多く犠牲にして、殺してしまうのであれば、憎悪と恐怖を広げるだけです。私はそれを正義だとは言えないと思います。
 戦争そのものが『悪』なのです。二つの主張に対して、どちらが正しいかという議論には結論はありません。戦争というのは、武器を蔓延させてしまいます。何かあったら怖い、という気持ちから、人々は家に武器を置くようになります。そういうことが、社会を軍事化、武装化させ、民兵を生み、過激派を生み、宗派抗争や内戦が始まるなど、暴力の連鎖を生んでしまいます。
日本は難民に対してどのような姿勢であるべきか
 世界5位のエネルギー消費大国でありながら、エネルギー自給率は4%~5%。エネルギーの中心の石油の9割を中東に依存する日本が、中東の状況悪化によって難民が大量に出ているのを、他人事と言っていられるでしょうか。軍事的な国際貢献策を考えるより、難民対策への取り組みを本気で考えるべきです。

日本は中東から遠い?
 日本でその事実はあまり知られていませんが、全編アラビア語で放映されている日本のアニメは多く、中東の多くの人が、日本のアニメに慣れ親しんでいます。日本人がどんな日常を送っているのか、実は結構知っています。だからこそ、日本に行ってみたいと憧れを抱く若者もたくさんいるし、日本を身近に感じています。
 2011年の3月 エジプトのサッカーチームアルアハリーの試合で、『私たちの心は日本と共にあります』という文字を掲げ、東日本大震災に対しての追悼の意が示されました。
 日本人は中東というととんでもなく遠い世界と考えていますが、中東の人たちは、日本を決して遠い国だとは思っていません。それに対して、これからの日本は、中東に対してどのような姿勢をとるべきだと考えるか、講演会を通して考えるきっかけとしてほしいと思います。
 
この講演会については、中日新聞1月14日なごや東版にも掲載されました。
http://www.nufs.ac.jp/news_topics/20160114_01/index.html
○当日、会場にてご記入頂いたアンケートより、ご来場者の方からのご感想です(一部抜粋)○

 メディアから得る一面的な見方のほかに、アラブの現状に対しての内部からの視点を知ることで、多面的な見方を得ることができ、大変良い講演会でした。(一般参加者)

 実体験、取材を通してのお話は、想像以上にインパクトがありました。日本で平和に暮らしていて、平和ボケしてしまいますが、これからは世界に目を向けていきたいと感じるお話しでした。(一般参加者)

 実際に現地で取材をした方の話は説得力があり、いかにアラブ諸国の問題を他人事として見てきたかを痛感しました。今まで私が見ていた視点と、全く違うところの話が聞けて、現地の人々の思っていることが分かり、今まで思っていたイスラム国のイメージが変わりました。私たちが何の知識も持たず、メディアに流され、偏った考えを持っていては、この紛争問題は解決しないと感じました。(外国語学部英米語学科4年)

 普段、ニュース等では取り上げられないが深刻な問題、現実を現地にいたからこそ分かる視点で伝えてくださり、考えさせられる点が多くありました。残虐な事件、戦争から「イスラム国」に対して、ただただ危険で怖いという偏見、イメージを持っていました。これらを生み出した格差という原因にあまり目を向けず、ただニュースで見るテロや難民問題を悲惨と感じ、どこか他人事に感じている部分があったように思います。講演会の最後におっしゃっていたように、良い意味で平和ボケしている日本に住んでいる私は、より現実に目を向け、あまり公にされていない事実を知ることが大切だと思いました。その先に、考え、伝えられるようにならなければいけないと認識しました。決して簡単なことではありませんが、最終的に解決するためにはやはり人間の力だと思います。このように考える貴重なきっかけを作ってくださり、ありがとうございました。(現代国際学部現代英語学科3年)

 講演後の質疑応答での、「日本には、欧米諸国にできない支援ができる」という言葉に心を動かされました。私は、将来開発学を勉強する予定で、いつかは中東や、アフリカなどの発展途上国に関わる仕事をしたいと思っているので、自分も活躍できたらと思いました。(現代国際学部国際ビジネス学科3年)

 自分がどれほど国外のことを知らないのかを実感しました。国内だけで流れるニュースなどだけでは、他国の実情を知ることができないのだと思いました。テロに対しても、テロが起きた一瞬にばかり目を向けており、イスラム国が結成された背景を考えたことがありませんでした。今回の講演は、世界に目を向けるいい機会になりました。(現代国際学部国際教養学科2年)

講演会を終えて

 2011年9月に、ヨルダンでの13年間にわたる国際協力活動を終えて帰国してみると、日本には中東=危ない地域、中東の人々=テロリストという簡単な図式があることに気が付きました。そこで、混乱を極める中東情勢の中で、その地域に住む市井の人が今何を考えているのか、日本にとって中東はどんな存在なのかと考えるようになり、そんな観点から、中東諸国で人々との対話重視の取材を重ねているジャーナリスト、川上泰徳氏を講師に迎え、今回の講演会を開催することにしました。

 川上氏は、講演を通して私のこの思いにしっかりと応えてくれました。中東の厳しい現状、なぜこのような状況に陥ったのか、また中東の「普通の人々」が日本人に対してどのような思いを抱いているかなどを私たちに語りかけました。
 川上氏は講演の最後に、「ではあなたは中東の人々に何ができますか」と聴衆に問いかけて、講演を終えました。これは非常に考えさせられる、いわゆる‘thought-provoking’な問いであり、川上氏が我々に与えた宿題です。講演の後、多くの学生が川上氏に勢いよく話しかけているのを見て、若者の心に響く内容であったと確信しました。
 一般市民の方も多く参加され、やりがいを感じた講演会でした。
WLAC副センター長 佐藤都喜子