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TOP >  フランス語学習 総合ガイド >  第5講(1) フランス語と英語との関係

第5講(1) フランス語と英語との関係


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1.フランスと英国との関係

フランスと英国の関係に目を向けてみましょう。
ノルマンディー公ロベールの庶子ウィリアムは、英国王から王位継承権を得ていましたが、王の死後 Wessex 伯 Harold が即位したので、1066年、約一万の軍を率いて英国に侵入、英国南部のヘイスティンクスの戦いに勝ち、英国王になりました。これが有名なノルマン人の英国征服です。この侵入軍が英国の地にもたらしたのはフランスの一方言、( ルマンディー方言)でした。1215年にはフランス語が公用語として認められるほど、英国ではフランス語、英語の2言語が併用され,上流社会はフランス語を、中流・下流社会は英語を話されていました。こうした約 300 年にわたるフランス語の支配は英語の各方面に大きな影響を及ぼしました。これは語彙の面で最も著しく、 freedom-liverty などの多数の同義語を生んでいきます。フランス語は ノルマン人の征服以前にも英語に入っていましたが、最も多く移入されたのはChaucer (チョーサー)の時代です。文法上の影響は様々な見解があるものの、例えば、英語がドイツ語と違って名詞や形容詞の格変化を失ったのはフランス語の影響だといわれています。 その後 1731 年3月4日の法令で最後的に廃止されるまで、フランス語は法律用語として永らえました。

英語とフランス語には、綴り字が同じあるいは似ている語が、語源は同じでありながら別の意味 あるいは一部が共通の意味 になってしまっている言葉が多くあります。これを faux amis (空似言葉)と呼びます。少しだけ見てみましょう。
フランス語 英語
cave 地下室 cave 洞穴
histore 物語 history [歴史]の意味は共通
lecture 読書 lecture 講義
次にフランス語と英語の文法上の相違点を、初級レベルとして所有詞の問題,中級レベルとして叙法の問題に焦点を当てて検討してみましょう。

2.初級レベル—所有詞の問題

英仏両言語の大きな相違は、フランス語での所有詞は、所有される人やものの性・数と必ず一致しますが、英語ではこの一致が無いことでしょう。ところが逆に3人称単数においては英語は所有者の性を his, her と 区別しますが、フランス語はこの区別がありません。これは英語では所有詞は人称代名詞の属格だから、性を区別するのに対して、フランス語の所有詞はラテン語 を起源にもち、これには性・数の区別がなかったために、今のような形となったのです。さらに複数の人称では、英語でも所有者の性の区別がなくなり、フランス語も同様に所有されるものと性の一致をしませんが、数の区別はします。

両言語について3人称を比較対照してみましょう。
男性単数名詞 女性単数名詞 男・女複数名詞
フランス語 son père sa mère ses parents
彼の父 彼の母 彼の両親
彼女の父 彼女の父 彼女の父
英語 his father his mather his parents
her father her mather her parents
男性単数名詞 女性単数名詞 男・女複数名詞
フランス語 leur père leur mère leurs parents
彼らの父 彼らの母 彼らの両親
彼女らの父 彼女らの母 彼女らの両親
英語 their father their mather their parents

3.中級レベル—叙法

[叙法]というものを説明しましょう。私たちがことばを使う時、単なる事実を述べる場合もありますが、自らの気持ちを込めることができます。「もっと若かったら何でもできただろうに」など現実とは違うことを言うこともできますし、初めて会う人のことを「親切な人だったらいいなあ」などと希望を込めて言うこともできます。叙法とは、こうした話し手の気持ちの様々な変化に対応する動詞の変化のことをいいます。直説法を含めた4つの叙法について触れておきましょう。

     1.直説法: 事実をありのままに 客観的 に述べる叙法です。
     2.命令法: 人に命令したり依頼したりする時に用いる叙法です。
     3.条件法 :事実と異なる仮定的条件の結果として起こるはずの行為、状態を述べるとともに、推測、
             語気の緩和などのニュアンスを表すこともあります。
     4.接続法 :頭の中で考えられた行為、状態を 主観的 に述べます。

こういったことは日本語にも当てはまります。次の用例を比較してみましょう。

     1)時間があれば、あなたに会いに行きます。
     2)時間があれば、あなたに会いに行くのに。

1)、2)はほとんど同じように見えますが、話している人の残念な気持ちが伝わってくるのは2)の方です。1)では「時間があれば会いに行く」という単純な事実を述べるためだけに直接法が用いられているのに対して、2)では「会いに行きたいのにいけない」という気持ちを表現されています。

これをもしフランス語にするとしたら次のようになります。例えば条件法現在は、事実と反すること「もし~だったら…なのに」の「…なのに」の部分に条件法現在が用いられているのです。

     1)Si j'ai le temps, je viendrai vous voir
          ↑            ↑
       直説法現在    直説法単純未来

     2)Si j'avais le temps, je viendrais vous voir.
          ↑               ↑
       直説法半過去       条件法現在

次に、他の例文を英語との対比で見てみましょう。

フランス語の条件法現在は、英語の仮定法過去に当たります。次の文は両方とも、「今日お天気なら出かけるのに」という意味になります。よく似た構造であることがわかるでしょう。

     仏語 S'il faisait beau aujourd'hui, je partirais.
     英語 If it were fine today, I would start.

フランス語では、
     Si+S(主語)+直説法、S+条件法現在
英語では、
     IF+S+過去形、S+would+原形
になっています。