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2015年度


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4月3日 フレッシュマンキャンプ

毎年恒例のフレッシュマン・キャンプが4月3日(金)に催されました。本行事は新入生の親睦を含める目的で、10年前から行われています。今年は新入生83名、教職員12名、卒業生1名、在校生6名、フランスからの教育実習生2名の計105名の参加となりました。
会場は名古屋駅近くの「ウインク愛知」。午前中は主に、教員紹介と新入生による自己紹介がなされました。地元や趣味、興味のあるクラブ活動などを話す学生も多く、自由時間にはその話題で盛り上がっていたようです。
ビュッフェ形式での和やかな昼食後、まず、フランス人教員4名と実習生2名によるレクリエーションが賑やかに行われました。グループ対抗のゲーム形式としたため、グループ内での結束力は一段と高まったようです。続いて、春の短期海外研修の紹介では、美しい映像とこの3月に参加した学生へのインタビューによって、新入生は研修への参加に強い意欲をもったようです。
その後、本学科の卒業生1名に就職や留学に関する体験談を語ってもらうと同時に、事前に新入生にアンケートをして把握していた質問に答えてもらいました。大学生活だけでなく、今後の将来を考える上でとても役立つ具体的な話を聞くことができたようです。続けて、2年次生6名が各テーブルを回り、すぐ上の先輩ならではの話しをしてくれました。大学生活が始まった今、頼りになる先輩となってくれている筈です。
 一日のみでしたが、様々な活動を通して、学生同士だけでなく、学生と教員間でも交流を深めることができ、新たな一年をスタートさせる非常に良い機会となったと思います。

4月20日 ドゥニ・パイヤール先生講演会

 2015年4月21日(月)午後4時40分〜6時10分、外大2号館224教室にて、名古屋外国語大学外国語学部フランス語学科主催の学術講演会が行われました。講演者はフランス国立科学研究所の研究ディレクターで、フランス国立パリ第7大学大学院で教鞭をとるドゥニ・パイヤール先生でした(専門はロシア語学、フランス語学、クメール語学、語彙意味論)。パイヤール先生は4月19日にパリを出発され、講演の前日早朝にセントレアに到着されたばかりでしたが、当日は1時間半、立ったままマイクなしで話されました。会場は満員で、フランス語学科の学生、フランス人および日本人教員も熱心にノートを取りながら聞き、質疑応答も時間が足りないほどで大成功の講演会となりました。一般にも解放されたイベントのため、通訳付きでしたが、フランス語学科の3・4年生や留学から帰った学生さんたちは通訳を介せずに理解していたようでした
 講演は『フランス語の談話標識の記述とその教育への応用』と題され、パイヤール先生が長年研究され、近年集中的に成果を発表している談話標識(ディスコース・マーカー)の記述とその教育法開発がテーマでした。具体的には、2012年にパリ第7大学(名外大とは提携校)とベトナムの国立ハノイ大学との共同研究の成果として出版された学術出版物Inventaire raisonné des marqueurs discursifs du français. Description. Comparaison. Didactique 『フランス語の談話標識の総合目録:記述、比較、教育』に基づいた内容でした。
 これはフランス語圏大学機構 (AUF) の助成による出版物です。AUFにはアジア地域では東南アジアの3カ国、ベトナム、ラオス、カンボジアが加盟しており、これらの国々は歴史的理由から、現在でもフランスとの関係が深く、フランス語教育にも長い歴史があります。パイヤール先生は過去10年間集中的にパリと東南アジアを行き来し、現地のフランス語教師向けのワークショップも行っており、その経験も盛り込まれ、理論と実践に裏打ちされた講演は日本でフランス語を学び、教える者たちにとっても貴重なものでした。
 談話標識(ディスコース・マーカー)とは言語学の用語で、間投詞、接続詞、副詞、前置詞句を含み、パイヤール先生によると、単一のカテゴリーとして記述されるべき一連の語彙群です。談話標識は、従来の教科書や文法書等では、取り上げられることの少ない語彙群ですが、データを観察するとそれらの一見無意味な表現にも、固有の意味や文法があり、コミュニケーションにおいて重要な役割を果たしていることが分かります。それらを正しく記述することが説明への第一歩であると述べられました。
 日本でのフランス語の談話標識の教育へのヒントとして、書き言葉と話し言葉では使われる談話標識の種類に顕著な違いがあり、その差をまず理解させること、談話標識がある場合とない場合の文例を作成し、その違いを説明すること、外国語教育の早い段階からすこしずつ導入していくことなどを具体的にアドバイスされました。
 学術的な内容の講演でしたが、教員側からすると、ファカルティ・ディベロップメントの面もあり、フランス語学科の教育力向上に大きく貢献する内容であったと思います。フランス人の講演を聴くのが初めての学生のリアクションペーパーにも肯定的な反応が寄せられ、主催者側としても大きな満足を感じると同時に、今後もこのような講演会を定期的に開催し、継続していく必然性を感じました。(フランス語学科准教授 伊藤達也)

10月20日 平野啓一郎氏 講演会

 2015年10月20日(火)16時40分〜18時10分、外大7号館701教室にて、フランス語学科主催ワールドリベラルアーツセンター共催の講演会が開催されました。講演者は平野啓一郎氏で、タイトルは「生命力の移動 – ボードレールと分人主義」でした。平野啓一郎氏は、言うまでもなく著名な作家で、京都大学法学部在学中の1998年に文芸誌『新潮』に発表したデビュー作『日蝕』で第120回芥川賞を受賞し、三島由紀夫の再来と大きな話題になりました。平野氏は蒲郡市のお生まれで、愛知県とも深い関わりがあります。

 当日大学に到着した平野氏はジーンズに黒いTシャツ、黒いジャケットという装いで、芥川賞受賞時の時に茶髪にピアスと騒がれた時から、17年経った今でも風貌に変わりありません。ロックTシャツのように見えるTシャツは、よく見るとエドガー・アラン・ポーの「大鴉」をモチーフにしたデザインでした。ポーの仏訳者でもあったボードレールへの目配せが感じられました。
 講演に先立って亀山郁夫学長が挨拶され、平野氏の長編小説『決壊』について最近書かれたばかりのエッセーを朗読されました。平野氏もこの挨拶を予想していなかったようで、学校を挙げての受け入れに感謝し、講演にも一層熱がこもった様子でした。

 講演で平野氏は、ボードレールが1855年に書いた第一回パリ万国博覧会の美術評の総論の部分に現れる「生命力の移動」という概念を取り上げました。平野氏がボードレールに出会ったのは北九州時代に岩波文庫版『悪の華』(鈴木信太郎訳)からで、京都大学入学後に、当時出ていた人文書院版の4巻の全集を古書店で入手し、4巻目に収められた美術論に大変惹かれたということでした。

 ボードレールは、万博の美術展会場で、古代ギリシャやローマの文明が滅び、イギリスやフランスで新たな近代文明が花開いているのを目にし、かつては遠方の土地で花開いた美の「生命力の移動」を語っています。平野氏は昨今の企業の移り変わり、かつて花形だった、ソニーやシャープといった日本を代表する企業が衰退し、アップルやグーグルといった全く別の企業が繁栄しているという現状を、この「生命力の移動」という現象になぞらえました。そのような不安定な時代に、自らの提唱する「分人」の考え方(詳しくは平野啓一郎著『私とは何か--「個人」から「分人」へ』講談社現代新書を参照してください)、すなわち、「個人」としての一貫性にこだわりすぎるのではなく、他者との関わりを通じて自分を変化させることを肯定的に捉え、様々な人との関わりを通じて変わる自分を受け入れ、自分が自分らしくいられる人とのつながりを大切にすることをアドバイスされました。
  聴衆を意識し、平野氏は作家としてよりも人生の先輩として、誠実に学生の皆さんに語りかけていました。ロマン主義や象徴主義のフランス文学にはまだそれほどなじみのない学生、平野さんの作品をまだ読んだことのない学生も、難解な純文学の作家と言うイメージを良い意味で裏切る、気さくで飾らない彼の人柄に触れられた時間でした。就職活動や人間関係に悩む時期の学生さん達は、平野さんの「分人」の考え方に大きく共感したことが講演後のアンケートからも伺えました。
 平野氏は講演会後の食事会にも参加され、学長を始め多くの教員達と気軽に文学や人生について話をされました。翌日はご友人の横尾忠則氏の高松宮殿下記念世界文化賞の明治記念館での受賞式典に招待されているそうで、多忙の中、名古屋まで赴き、大学のために多くの時間を費やしてくださった平野氏の、人柄と日常生活に触れられた貴重で濃密な一日でした。

http://5pesdsnp.arcms.jp/cms/artis-cms/common/image/cms-bt001on.gif


11月2日 ピエール・ルメートル氏の講演および中村文則氏との公開対談(ワールドリベラルアーツセンター主催)

 2015年11月2日(月)15時00分〜16時30分、ワールドリベラルアーツセンター主催、外大フランス語学科共催の公開講演会・対談イベントが行われました。基調講演者は、アンスステュ・フランセおよびアリアンス・フランセーズ愛知フランス協会が「読書の秋2015年」のためにフランスから招聘したフランス人作家ピエール・ルメートル氏で、特別ゲストが愛知県東海市出身で現在東京在住の芥川賞作家中村文則氏でした。

 ルメートル氏は、昨年発売された『その女アレックス』が80万部を突破する売れ行きで、日本のミステリ界の話題を独占している作家です。また2013年にフランスで初めて発表した純文学作品『天国でまた会おう』がその年のゴンクール賞を受賞し、日本でも邦訳が出版されたばかりというタイミングでの来日でした。一方、中村氏は最新作『教団X』がベストセラーになっており、また大江健三郎賞を受賞した『掏摸』とデビュー作の『銃』が仏訳されており、ルメートル氏にも仏訳でこの2作品を読んでいただいての公開対談ということになりました。

 講演会に先立ち、亀山郁夫学長がフランスから初来日されたルメートル氏への感謝と近作への賛辞を述べられました。また中村氏に対しては「彼はドストエフスキーの子供です」という印象的な紹介がなされ、ドストエフスキーを通じての師弟関係と短期間で世界的な人気を獲得した愛知県出身の若い作家への期待が伺われました。
 基調講演で、ルメートル氏はユーモアと真剣さの絶妙なバランスで、自らの文学に対する熱意を語りました。講演のタイトルは「小説とジャンル-純文学とミステリ」というものでした。ルメートル氏によれば小説は近代以降、カテゴリーとして典型例が存在しなくなってきており、そのサブジャンルとして存在したミステリも、現在ではかつてのような分類(謎解き物、ミステリ、ノワール等)が当てはまらなくなってきているということでした。中村氏の作品はミステリとノワールの混交であり、犯罪や謎が存在しなくともミステリが成り立つことを示し、その意味で典型的なモダンなミステリだということでした。

 この講演を受けて、中村氏が『その女アレックス』『悲しみのイレーヌ』『死のドレスを花婿に』『天国でまた会おう』を読み込んだ上で、ルメートル氏の創作上の秘訣について質問されました。世界中の人が熱中する小説を次々と発表し続けるこのフランス人作家は、印象的な最初と最後のシーンをまず考えること、脇役に至るまで全ての登場人物を魅力的にすることなど、創作の秘密を明かしてくれました。それを受けて、中村さんの方も、アメリカで「ジャパニーズ禅ノワール」と評された、短い描写でシーンを印象的に記述するテクニックなど、自らの創作の秘訣を話してくれました。

 二人の人気作家の会話は大学での1時間半の枠内では終わるはずもなく、第二部として、場所を移して本山のアリアンス・フランセーズで6時半から本格的な対談へと引き継がれました。こちらは「私の小説技法」と題され両者の小説技法の秘密を具体的に話すという興味深い内容でした。様々な職業を経験し、55歳でのデビューと遅咲きながら、フランスを始めとして世界中で多くの読者を獲得しているルメートル氏は、(『悲しみのイレーヌ』も発売直後ながら大変な売れ行きだそうです)「サン=テグジュペリの『星の王子様』の次に売れているフランス人作家」と日本で言われて驚いたという逸話も披露しました。
 この対談の内容は、『月刊文藝春秋』2016年新年特別号にも掲載され、多くの人に名外大でのイベントの内容が知られることになりました。テレビ番組の取材も入っており、外部から数多くの参加者が訪れ、大成功したイベントでした。


セネットの会・弁論大会

 昨年に引き続き、3回目となるセネット(寸劇)の会が10月29日に行われました。1年生がこれまで学んできたフランス語力、主にフランス語の口頭表現力を披露する目的で昨年度より新しい試みとして設けられた学科イベントの一つです。
 学生たちは少人数のグループに分かれて、教員から与えられたテーマをもとに自由に会話文を作り、発表までの数週間、練習に励みました。当日は効果音を駆使したり、また仮装をして場を盛り上げる学生も大勢おり、大盛況に終わりました。
 

 教員一同、学生たちのフランス語の表現力がわずか半年でセネットを演じられるほど身についたことにとても喜びを感じました。セネットの内容に応じて、教員が審査を行い、上位2チームには賞品が贈られました。1位には「Ce n'est pas facile la vie d'une clef(カギの人生は楽じゃない)」、そして2位には「Où est ma valise? (スーツケースはどこ?)」を発表したグループが選ばれました。なお、入賞した2チームは、後日行われた弁論大会で上級生に披露しました。

 また11月5日(木)に、2015年度弁論大会が開催されました。審査員として「アリアンス・フランセーズ愛知」からクリストフ・ドレイエール氏をお招きし、学内審査員にはローラン・アヌカン准教授(本学科)、ヤニック・ドゥプラド講師(本学科)、近藤野里助教(本学科)に審査をしていただきました。

 今年度の弁論の部には10名が参加しました。この弁論大会では大学の留学制度を利用してフランス語圏に留学した学生たちが、自身の留学中の体験談などについてフランス語でスピーチをします。弁論大会参加のためには予備審査があり、帰国生が提出した原稿の選抜をします。予備審査で選ばれた学生は約2か月間、原稿の校正や発音、イントネーションについてネイティブスピーカーと練習を行い当日に備えます。

 今年度も個性溢れる内容のスピーチが多く、原稿の構成も多岐に渡り、聞き手にとって興味深いものだったとの良い評価が聞かれました。1位には「Des paroles magiques(魔法のことば)」、2位には「Mieux échanger avec les autres(他者とよりよくコミュニケーションをとるには」、審査員賞には「La vérité dans le vin(真実はワインの中に)」がそれぞれ選ばれました。

 在学生は帰国生の実力に感銘を受けるとともに、またこれから留学を目指そうとする学生にとっては、より一層フランス語に取り組むモチベーションが上がったようでした。